2023年7月17日月曜日

民法の学びなおし~第1回 「民法とは、私人間の権利義務関係を規律する法律である」

 司法試験から離れてやがて1年。法律を使って仕事をする一般社会人として半年以上やってきた中で、こんな説明で最初から勉強したかったな、と思うことはよくある。ならば書こうというもので、実務の中でもしっかりと復習しながら知識を維持したいという私利私欲も兼ねて、連載の形で「民法の学びなおし」として民法の解説を書いてみることとした。失踪しないことをお祈りいただければ幸いだ。

本連載は、初学者、及びリカレントに向けた解説として、若干学術的な正確性を犠牲にしつつ書いた部分もある。厳密さを省いた箇所には極力自学自習への案内を入れようとは考えているが、不十分な箇所もある。知識のある諸兄にはご容赦願いたいと同時に、ご指摘もお待ちしている。

では、以下、第1回「民法とは、私人間の権利義務関係を規律する法律である」をお届けする。


民法とは、私人間の権利義務関係を規律する法律である、という使い古された表現があるが、他の法律との差を考えてみると、より明確になるといえよう。法律という世界のプレイヤーとして登場するのは、過去の歴史的経緯等から、①私人 ②公権力(国・行政主体など)に大別される。更に、それらが①→A.自然人(ひとまず、人間と理解してよい) B.法人(代表的なものが株式会社である)と②→C.D.地方公共団体 E.裁判所 F.警察 といった形で細分化して説明される。これらのプレイヤーのうち、誰と誰の関係を決める法律か、という考え方が、「民法とは、私人間の権利義務関係を規律する法律である。」という理解につながるわけである。

すなわち、①私人と①私人の間の関係を規律する法律であるのが「民法」であり、②公権力(特に国)を縛る法律が「憲法」であり(異なる理解もあり得るが)、①私人に対して②公権力(特に国)がどのような刑罰を課すことができるかを定めたのが「刑法」、①私人に対して②公権力(特に裁判所や警察)が何をしてよいのか定めたのが「刑事訴訟法」、という形に整理されるのである。更に言えば、B,法人とB,法人の間の権利義務関係を規律したり、そもそも法人とは人間が考え出した概念であるから、法人のなんたるかを定めたりするのが「商法」や「会社法」である。

このように、誰がプレイヤーであるかで法律というものは大別されているといえる。このような分類が当てはまる法律は多いが、もちろん、それ以外の分け方も必要となる。例えば、民法の特別法であるところの「消費者契約法」や、民法/刑法の特別法という捉え方も可能な「著作権法」など、適用対象(どんな取引か、何を目的物としているか)に着眼しなければ分類できない法律もある。

閑話休題、民法というものは、私人間の権利義務関係の基本法であって、その内容は特定の取引に限定されるものではない。すなわち、少々乱暴な言い方をしてしまえば、民法の適用がない「契約」というものはありえないのである、といえる。

 

コラム1

すべての契約に民法が適用されると言うならば、②公権力と①私人の契約、例えば市役所の建物建設業務委託契約はどうなるのか、という疑問が湧いてこよう。おそらく、直感的にも民法が適用されないわけはないと考えるだろうが、そのとおりである。

この場合、②公権力といえども、①私人(法人)と同じ立場で契約しているものである、という考え方がなされる。地方公共団体としてもつ、私人に対する「特別な権能」を行使しない場合であれば、基本的に①私人に準じるものと考えるべきだろう、という当たり前の考え方による。

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