2022年1月24日月曜日

VTuberニュースレター:2022年1月24日号(第1号)

 VTuberニュースレター:2022124日号(第1号)

 

2022124

今日のご飯はかにかまプリンの

多摩 リン

 

2016年末のキズナアイのデビューに端を発し、2018年初頭に現在のANYCOLOR株式会社からにじさんじ最初のライバーとして月ノ美兎がデビュー。そのころより急激に増加の一途を辿るVTuberは、20211019日時点で16,000人を超えている[2]

本連載では、毎回3名のVTuberに焦点をあて、様々なVTuberを知るきっかけを提供したいと考えている。

なお、しばらくの間は3名のうち1名をANYCOLOR社「にじさんじ」系列[3]1名をCOVER社「ホロライブ」系列[4]、そしてもう1名はそれ以外のグループから取り上げることとする。これは、人数の多さ、そして需要の高さからやはりこの2社のVTuberは優先して紹介すべきであろうと考えたことによる。

 

1. 今日のにじさんじライバー

「起立!気をつけ!こんにちは、月ノ美兎です」

どんなVTuber

記念すべき第1回はやはり委員長だろう。黎明期の業界を大いに盛り上げた、いわゆるVTuber四天王と呼ばれる中には入らないが、まだVTuberという存在が一部のオタクたちに知られていた程度の20182月にデビューした美兎委員長は、見た目こそ割とオーソドックスな女子高生であり、根は真面目、そして旧1期生[5]の樋口楓、静凛と3人で「JK組」というユニットを持つ。しかし、彼女の言動や趣味はかなり尖っており、初配信で映画「ムカデ人間」の話[6]をし、月ノ美兎のファンを公言する後輩リゼ・ヘルエスタを騙し、度々ホラーゲームに誘っては悲鳴を楽しむなど、同様に清楚に見えてぶっ飛んでいる電脳少女シロ等と共に、現在の業界全体の奔放さを決定づけた人物でもある。

おすすめエピソード~独断と偏見で選びます~

・かえみとが一緒に服を買いに行く話(月ノ美兎/樋口楓)

https://youtu.be/F1vNXCK45_8 (樋口楓・本編)

https://youtu.be/HCePEzlOYco (うちさ・切り抜き)

・ジェラピケを買った話(月ノ美兎/レヴィ・エリファ)

https://youtu.be/w27KPTKG034 (月ノ美兎・本編)

https://youtu.be/1a2WPNF2y24 (にじさんじ公式・切り抜き)

・謎ノ美兎(月ノ美兎/謎ノ美兎?)

https://youtu.be/gB2E54dzk30 (月ノ美兎・本編)

https://youtu.be/o6-na8AVSqI  (月ノ美兎・本編)

https://youtu.be/XRK9xxfkhk4 (月ノ美兎・本編)

・罪(月ノ美兎)

https://youtu.be/aAgpofIZ8_g (月ノ美兎・本編)

GO HOME完全版(ホラーゲーム)(月ノ美兎/リゼ・ヘルエスタ)

https://youtu.be/sgQDOU8kmvI (月ノ美兎・本編)

・ヨーロッパ企画(月ノ美兎)

https://youtu.be/6QkJQJS21BY (月ノ美兎・本編)

 

おすすめ歌ってみた~カバー曲~

https://youtu.be/DUWbqT2CEYg (輪!Moon!dass!cry!/JK組(月ノ美兎/樋口楓/静凛)

https://youtu.be/TBYbrbImDIw (ニホンノミカタ/月ノ美兎)(本編: https://youtu.be/LS2EnUYl7XQ )

https://youtu.be/PAJJT_L55ws (ネコミミモード/月ノ美兎)

 

オリジナル曲ピックアップ

https://youtu.be/kIDbhlDCLs4 (YouTube Music Weekendスペシャルライブ)

https://youtu.be/L0X1fDI5PJA (アンチグラビティ・ガール)

https://youtu.be/mkGN7jTRwfI (それゆけ!学級委員長)

 

2. 今日のホロメン

()こんそめ~」

どんなVTuber

にじさんじの大将が月ノ美兎ならば、ホロライブの大将はときのそらだろう。デビューは月ノ美兎より早く20179月。ホロライブ唯一のアイドルである

アイドルグループ「ホロライブ」最初のメンバーというよりは、ときのそら(と、マネージャーである友人A)がCOVERの社長谷郷元昭氏にバーチャルアイドル活動のサポートを依頼し、かつて存在したライブ配信アプリhololiveを作り上げたという形である。そのような経緯からか、初期のそらとも呼ばれる、現在とはデザインが大きくことなるモデルが存在する(経緯はそれぞれだが、AZKi、星街すいせい等も同様に見た目が大きく異なる旧モデルが存在する)。配信プラットフォームも最初期はニコニコ動画であり、17MirrativREALITY等を転々とした後、YouTubeに落ち着いた。

ビクターエンタテインメントから3枚のアルバムをリリースし、2019年には単独ライブ「Dream!」を開催、将来は横アリで単独ライブをすることが夢と語るなど、ホロライブの中でも特にアイドルらしい活動が多い。デビュー後しばらくは他のホロメンのようなゲーム配信、雑談配信等はあまり行っていなかったが、現在は頻度こそ低いものの、それなりにマイクラ等ゲーム配信を行っており、「大空建設サークル」に所属するなどしている。

 

おすすめエピソード

・じゃあ敵だね(ときのそら/湊あくあ/夏色まつり/大神ミオ/紫咲シオン)

https://youtu.be/cpDbKdsxQYQ (ときのそら・本編)

https://youtu.be/1kzEOXmyzjc (膳所ハルヒ・切り抜き)

・そら先輩(ときのそら/星街すいせい/不知火フレア/宝鐘マリン/天音かなた)

https://youtu.be/yOU1U9Y7XrM (宝鐘マリン・本編)

https://youtu.be/SteSI8fwJMs holoclip・切り抜き)

 

おすすめ歌ってみた

https://youtu.be/NT6Pf28eCgQ (エイリアンエイリアン/ときのそら)

https://youtu.be/TgRLreIZiaE HOT LIMIT/ときのそら)[7]

https://youtu.be/35fKzdDH654 (檄!帝国華撃団/燦鳥ノム×富士葵×ときのそら)

https://youtu.be/kTV6uSmiXEw (夢色アスタリスク[8]/ときのそら)

 

オリジナル曲ピックアップ

https://youtu.be/yVxmv4oqPzs (未練レコード/ときのそら×40mP

https://youtu.be/tiTnyZ5QLao (刹那ティックコード/SorAZ[9]

https://youtu.be/APQZKmC11mc (青空のシンフォニー[10]/ときのそら)

https://youtu.be/A4rwGGrBVrg (ぐるぐる・ラブストーリー/ときのそら)

 

3. 今日のVTuber

「こんばんわんわん!」

パトラちゃん様。今回紹介のメンバー2人が強すぎるので、パトラちゃん様くらいでないと印象に残らないと考えたため、準大手[11]774.incの代表格の一人、周防パトラを紹介したい。

 

どんな事務所?

774.incVTuber事務所の規模を考える指標はいくつか考えられるが、のべ登録者数(所属VTuber各チャンネルの登録者数の合計)が最も良く規模を示すと考える[12]と、世界第4[13]の集団である。774.incが運営するグループは複数あり、有閑喫茶あにまーれ、ハニーストラップ、ブイアパ、シュガーリリック、緋翼のクロスピースの5つである。このグループは他社でいえば期に相当する印象で、それぞれが5ないし12人、一定のコンセプトをもってデザインされ、活動している。

同社は社名以外あまり情報がない会社であり、公式ページ[14]にも会社の沿革等はない。また、他の事務所やグループでは一般的に公開されることの多い、いわゆるママ(イラスト担当者)を明らかにしていないことも特徴である。それどころか、公式ページで案内されている情報は名前とグループ名、ツイッターアカウントとYouTubeチャンネルのみという簡潔さである。

 

どんなVTuber

実質的にハニストのリーダーである。ASMR配信[15]をイチオシコンテンツとしており、DLsiteでの販売[16]も行っている。髪型も声も特徴的で、ひと目見て、一声聞いてすぐパトラちゃん様だとわかるのは素晴らしい。また、社外含めコラボも多く行っているため、色々な配信で彼女の姿を見ることができる。

音楽活動も盛んで、初配信から「あいあむなんばーわん!パトラちゃん様!」を公開し、アルバムも出している。全体的に電波曲が多い。なお、ほとんどの曲を自ら作詞作曲している。

雑談配信[17]も行うが、その中での言動があまりにおじさんであるため、パトおじと呼ばれることもある。ガンプラが好きで、戦車が好き。

 

おすすめのエピソード

・ガンプラを組み立てるのに忙しい (周防パトラ)

https://youtu.be/oir6vMrg76I (周防パトラ・本編)

・心音のために下着をつけない (犬山たまき/周防パトラ/竜胆尊/癒月ちょこ/白銀ノエル)

https://youtu.be/4oTOrqdSmYk (犬山たまき・本編)

https://youtu.be/m8mcUB7w9C0 (切り抜きパトラちゃんねる・切り抜き)

 

おすすめ歌ってみた

https://youtu.be/AaCFoBdpviw (うまぴょい伝説/さくらみこ×不知火フレア×周防パトラ)

https://youtu.be/6As9AIORorw (お願いマッスル/堰代ミコ×周防パトラ)

 

オリジナル曲ピックアップ

https://youtu.be/71D8RTud9XU (あいあむなんばーわん!パトラちゃん様!/周防パトラ)

https://youtu.be/GHKuqM46Z6Y (ラムネ色クレーター/周防パトラ)

https://youtu.be/T5o7-9Bc_-g (ぶいちゅっばの歌/周防パトラ)

https://youtu.be/pb0DyZwc_sE (かにプのうた/周防パトラ)

https://youtu.be/uJyr6V8W5JA (イミグレーション/周防パトラ)[18]

 

4. おわりに

毎日書けたらいいなと思っていたが、想像以上のボリュームになってしまったので週3回出せたらいいな、に早速下方修正した。

当然ながらそれぞれのVTuberの魅力のごく一部しか伝えられていない上、誤った見方を提供している場合もあるかとは思うが、イチVTuberファンの目線として暖かく見守ってほしい。これ以上の調査をして公平性を担保して書くには時間と金がないので企業さんやってください、というかPy2.jpさんとか見て自分で情報収集してください。



[1] 画像を貼付し、その引用元を記載していましたが、本記事では画像を削除致しますので、脚注は[2]より開始します(著作権法上の引用要件を充足しないため)

[2] 株式会社UserLocalの調査による。( https://www.userlocal.jp/press/20211019vs/ )

[3] 今後、特に断りのない場合、「にじさんじ」には日本勢のみならず海外勢(NIJISANJI ID/EN/KR/VirtuaReal)を含む。

[4] 今後、特に断りのない場合、「ホロライブ」は女性VTuberグループ「ホロライブ」に限らず、hololive EN/ID、ホロスターズ、及び(4月までは)イノナカミュージックを含む。

[5] 現在にじさんじでは「期」の概念を撤廃している(とはいっても、ほぼ同時期にデビューしたメンバーは同期と呼ぶこともある)が、2018年までは期の概念があったため、旧1期生等と呼ぶ。

[6] 別に好きだとは言っていない

[7] カバーアルバムRe:Play収録

[8] 初期にオリジナル曲を公募していた(soraSong)時期に採用された曲のひとつで、後にアルバムDreaming!に収録された。ときのそらのために書き下ろされた曲であるため、オリジナル曲と言ってもよいが、タイトルに【歌ってみた】とあるのでうたみた扱いとした。

[9] ときのそら×AZKi

[10] 作詞作曲もときのそら自身が行った

[11] 勝手な分類だが、大手がえにからとカバー、774.LIVE等それなりの規模がある事務所を準大手とした。異論は認める。

[12] 所属VTuberの数はいくらでも盛ろうと思えば盛れる気がするし、少数精鋭というパターンも考えられる。どれをとっても最適な指標とまではいえないが、のべ人数ならば薄く広くというパターンでも、少数精鋭でもある程度拾えるため。

[13] 第1位:ホロライブ(57499000)、第2位:にじさんじ(39212780)、第3位:VShojo(3735600)、第4位:774.inc(2547560)。なお、世界第4位とはいってもトップ10のうち実に8つが日本のグループである。

[15] 3DioKU100を複数台、果てはオーダーメイドのバイノーラルマイク、専用のスタジオを建てるなど、意味のわからないほどの投資をしている上にASMR配信では邪魔にならないよう広告を切っている。

[16] 2020年のDLsite ASMRアワードを受賞。ちなみに、私も買っているのでパトラちゃん様のわんちゃん。

[17] ゲーム配信も積極的で、特にマイクラでは他社のVTuberともコラボできるよう、専用のサーバーを立てている。

[18] 作詞作曲:Yunomi。ここで挙げた曲はこれ以外すべて作詞作曲:周防パトラである。

2022年1月18日火曜日

賃貸借契約にまつわる話(1) 賃料支払請求権+修繕が必要な場合の処理

601条(賃貸借)

賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。

賃料支払請求権>要件:

1.       賃貸借契約の締結→目的物と賃料を具体的に特定すること(目的物をいくらで使用収益させるか、という内容の契約こそが賃貸借契約の本質であるから。なお、返還時期の合意は賃料請求には必須でなく、賃貸借契約の成立要件でもない[1]。)

2.       基づく引渡し(使用収益可能な状態にすることが本来必要であるが、一般的に引き渡せば使用収益が可能であるから、これで足りる。逆に、引き渡されたが使用収益が不可能であったことは抗弁となる)

3.       一定期間の経過(賃料は目的物を使用収益可能な状態においたことに対する対価[2]であるから、対価発生に足る期間の経過が必要であるし、目的物の引渡しは先履行となる)

4.       支払時期の到来

 

賃貸借契約~修理が必要な場合

① 修繕の必要を通知(615)[3]、修理請求(606-1)→修繕義務履行請求(606-2で拒否不能)→修繕しない→債務不履行解除OR賃借人修繕権+費用償還請求[4]6072-x-1/-2608-1

←修繕不能/過大な費用負担が発生:修繕義務を負わない(②へ)

←賃借人の責めに帰すべき事由により生じた場合

←使用収益させる義務に含まれない場合(賃貸借契約中、設備と明記されてない形で置いてあったテレビなど)

 

② 使用収益不能による解除(611-2)<一部滅失、その他の事由で使用収益できなくなった場合において、残存部分では賃借人が賃借した目的を達することが出来ない場合[5]

 



[1] 賃貸借契約は貸借型(ある期間借主に目的物を利用させることに特色がある契約)契約であって、その成立要件は冒頭規定(587593601)に規定された事実に限られる。なお、目的物返還請求の場合は契約が終了したことを主張立証する必要があるため、返還時期の合意の主張立証+到来の主張(顕著な事実なので立証不要)する必要はあるが、あくまで成立要件ではない。(新問研/大島民裁実務基礎説。異説あり。)

[2] この対価性は一部減失の場合の当然減額(改正民法)の根拠にもなる

[3] 逆に、修理が必要にもかかわらず通知しなかった場合に損害が発生すると、賃借人が債務不履行となり415の損害賠償責任を負う可能性がある

[4] 修繕権を認めないと、勝手にした修繕は616594の用法遵守義務違反となり、賃借人が709債務不履行責任を負うことになる(答案上示すことはなさそう)

[5] 不動産賃貸借の場合の雨漏りなどは使用収益不能といえる。一方で、備付けのテレビが故障した場合程度では要検討(答案上は理由を明示してどちらに転んでも良い)

2022年1月9日日曜日

憲法短答用のノート:1 憲法上論~2条

 

憲法上論

(通説)8月革命説

帝国憲法73条に基づく改正手続きに則って帝国憲法を改正し、欽定憲法ではなく民定憲法である日本国憲法に変更したという建前になっているが、憲法の改正内容には限界があり、法的連続性があると考えるには無理がある。よって、8月革命という革命があったと考え、連続性を否定しつつ日本国憲法自体は有効に成立していると考える説。

→問題点:上論が無意味な内容となること、ポツダム宣言は天皇主権を終了させる効力はなく(内政干渉との兼ね合い)、国民主権に移行する債務を負ったに過ぎない(この批判は辰巳が使っているが、じゃあ改正時点で革命があったことにすればいいじゃないかと思う。根拠不明。)

 

憲法前文

法規範性はあるが、裁判規範性はない

前文は「日本国憲法」の後に記載されており、形式的に憲法典の一部であるから、憲法の一部として法規範性を肯定する。一方で、直接の裁判規範となりえず、具体性を欠くもので、解釈指針を示したに過ぎない(札高S51/Aug./05/長沼ナイキ控訴審)[1]

→憲法典の一部なので、改正する場合は憲法改正の手続きが必要

→前文で謳われる「平和的生存権」は裁判規範としては採用できない(最判S57/Sep./09/長沼ナイキ上告審)(最判平成1/Jun./20/百里基地)[2]

「主権」3種類

1.       「国家権力としての最高独立性」「対外的独立性」

前文3段落「政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信ずる」

2.       「国家の統治権」「国家権力そのもの」

ポツダム宣言第8項「日本国の主権は本州、北海道、九州及四国並びに吾等の決定する諸小島に局限せらるべし」

対連合国平和条約1(b)「連合国は、日本国及びその領水に対する日本国民の完全な主権を承認する」

91項「国権の発動たる戦争」

41条「国会は、国権の最高機関であって」

3.       「国政の最高決定権」

前文1段落「主権が国民に存する」

憲法1条「主権の存する日本国民の総意」

形式的意味の憲法/実質的意味の憲法

形式的意味の憲法→憲法という名前の成文法典(イギリス等には形式的意味の憲法(Constitutional Law)が存在しない)

↑↓

実質的意味の憲法→法形式にかかわらず、国家の組織や作用に関する基本的な規範を指す→国会法や公選法の一部も「形式的意味の憲法」と考えることは「可能」

固有の意味の憲法→国家統治の基本を定めた法としての憲法→政治権力とそれを行使する機関、権力の組織と作用及び相互の関係を規律する規範

立憲的意味の憲法→自由主義に基づいて定められた国家の基本法→国家権力を制限して国民の権利を保障するという思想に基づくもの。近代以降に出現。

硬性憲法/軟性憲法

改正手続きが通常の法律と同じものを軟性憲法といい、通常よりも厳格なものを硬性憲法という。

日本国憲法は56-2/96から改正手続きは一般の法律より厳格であるため、硬性憲法である。また、海外でも硬性憲法が多く、例えばドイツはドイツ基本法79条で改正手続きが定められているが、一般の法律より厳格な手続きが要求される硬性憲法である(硬性憲法だが改正回数は多い。アメリカとかもそう)。軟性憲法の国の例は不文憲法の国が多く、イギリス、イスラエル、NZ等少ない。

 

第一章【天皇】

天皇の裁判権

「天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であることに鑑み、天皇には民事裁判権が及ばない」(最判平成1/Nov./20/記帳所事件)

刑事訴追の可能性については判例、裁判例が存在しないが、およそ許されないと考えてよい

天皇の人権

人間であることから、基本的人権を享有する(←基本的人権の享有主体でないとする説も有力)。少なくとも、学問の自由や表現の自由は一応ある(制約を受ける)が、国籍離脱の自由などは完全にないと解されている。

辰巳の誤り、私の熱意。

天皇の崩御だけが皇位継承の原因と書いているが、そんなことはない(皇室典範4条は「天皇が崩御した際は皇嗣が皇位を継承する」ものであって、崩御以外の原因で継承できないとはどこにも書いていないし、仮にそう解釈すべきであれば上皇陛下は……)



[1] これら政治方針がわが国の政治の運営を目的的に規制するという意味では法的効力を有するといい得るにしても,国民主権代表制民主制と異なり,理念としての平和の内容については,これを具体的かつ特定的に規定しているわけではなく,前記第2,第3項を受けるとみられる第4項の規定に照しても,右平和は崇高な理念ないし目的としての概念にとどまるものであることが明らかであつて,前文中に定める『平和のうちに生存する権利』も裁判規範として,なんら現実的,個別的内容をもつものとして具体化されているものではない

[2] 「平和主義ないし平和的生存権…は,理念ないし目的としての抽象的概念であって,それ自体が独立して,具体的訴訟において私法上の行為の効力の判断基準になるものとはいえ」ない。

2022年1月2日日曜日

特許法:試験研究実施の簡単な解説

特許法トピックシリーズです。今日は試験研究実施について。論点としてジェネリック医薬品の問題、リサーチツールの問題を取り上げてみました。 

試験研究実施(69-1)

特許発明を業として無断実施しても、試験研究実施であれば特許権の効力は及ばない

特許法の目的たる発明の奨励(1)から、試験研究による発明促進という必要性と、試験研究であれば特許権者への経済的打撃は小さいという許容性から、試験研究実施(69-1)は適法となる。この趣旨から、技術開発目的である(利潤追求目的でない)ことが必要となる。

~例外(最判H11/Apr./16/民集53-4-627/膵臓疾患治療剤事件)[1]

ジェネリック医薬品の製造会社は後発医薬品とはいえ、安定性試験等の試験を発売前に実施し、薬機法[2]141項の承認を得る必要がある。メーカーとしてはこの試験は発売前、すなわち特許期間中に行ってしまいたいという需要がある一方で、「業として」「実施」するという評価は免れないため、無断で行うことは出来ない。そこで、本条の試験研究実施とした。しかし、試験研究実施は技術の進歩のために特別に許可されるものであるため、ジェネリック医薬品という特段進歩を予定しない内容かつ、最終的には利潤追求を目的とした研究開発のために用いることはできないのではないかという反論が考えられる。

この点について、最高裁は「特許権の存続期間が終了した後は、何人でも自由にその発明を利用することができ、それによって社会一般が広く益されるようにすることが、特許制度の根幹の一つである……もし(試験研究実施に当たらないとすると)特許権の存続期間が終了した後も、なお相当の期間、第三者が当該発明を自由に利用し得ない結果となる。これは前示特許制度の根幹に反するものというべきである。」として、肯定の立場を明確にしている。[3]

~リサーチツールの使用

リサーチツールとは、PCR法や実験用ラットなど、研究室で実験に用いるツールを指す。これが特許を受けている場合、このツールを産業における研究開発に用いることは試験研究実施として許容されるか。

確かに技術の進歩に資するものではあるが、もともと研究の手段として使用されることを目的として発明された技術であることから、研究開発に利用する場合に特許権が及ばないとするとおよそリサーチツールの発明は特許権の効力が実質的にないことになってしまう。また、69-1は特許発明自体の分析改良を中心とした研究開発について適用されるものであるところ、リサーチツール自体の改良を目的として試験研究実施をすること自体は許容されるが、リサーチツールを用いて別個の技術を開発する際にまで同条の趣旨が及ぶものではない。

なお、汎用性が高く、代替技術の乏しい基礎的なリサーチツールに関しては特許権の範囲を制限するべきである、という議論があるが、それは69-1の問題として捉えるべきではなく、もっぱら立法の場や、現場レベルの調整やFRAND宣言類似の考え方など対応は複数考えられるが、ともかく別途考慮すべき話であろう。



[1] 島並良・上野達弘・横山久芳「特許法入門」p300~p304

[2] 司法試験で書くことは少ないだろうが(行政法で出ないとは限らない)、薬事法は薬機法になっているのでうっかりに注意

[3] 否定説としては、技術進歩に趣旨の重点を置き、先の規範を貫徹すれば否定説になるが、明確に判例に反することになるので採用はオススメしない