2022年3月29日火曜日

職業選択の自由と営業の自由

 ・職業選択の自由

憲法22条は,職業選択の自由を保障している。

一般に,職業は生計を維持する手段であるという側面を有する一方,これを通じて各人が個性を発揮し,自己実現を図るという性質も有している。すなわち,憲法が職業選択の自由を保障する趣旨は,個人の生計維持と,職業を通じた自己実現を保障することである。

このように,職業選択の自由には個人の生計維持という経済的自由権の側面と,自己実現の価値という精神的自由権の側面がある。そして,精神的自由の側面がある以上,職業選択の自由の規制は安易に正当化されるべきでなく,その規制は Ⅰ.規制目的が重要であり Ⅱ.目的達成のために必要最小限度の規制である場合に限られるべきである。 

(この規制が許されるのは医師や弁護士等の国家資格系の場合が多いです。あとは医療とスレスレのラインである彫師とかで見ることがあります(彫師の医療行為性や規制を合憲違憲どっちに転ばせるかはお好みだと思います))

・営業の自由

憲法22条は,職業選択の自由を保障している。

一般に,職業は生計を維持する手段であるという側面を有する一方,これを通じて各人が個性を発揮し,自己実現を図るという性質も有している。すなわち,憲法が職業選択の自由を保障する趣旨は,個人の生計維持と,職業を通じた自己実現を保障することである。

また,職業選択の自由の実質を担保するため,選択した職業を遂行する自由をも保障する必要がある(営業の自由を保障しなければ,実質的に職業選択の自由を保障した趣旨を没却する)。よって,憲法22条1項は,職業選択の自由のいち内容として,職業遂行の自由,すなわち営業の自由をも保障していると解すべきである。

もっとも,営業の自由が憲法上保障されるとしても,公共の福祉の観点から一定の範囲で制約を受ける。ところで,前述の通り職業には生計維持の手段,すなわち経済的自由権の側面のみならず,自己実現の手段という精神的自由権の側面がある。

しかし,職業を遂行する自由たる営業の自由は,職業に就く自由を制限する場合とは異なり,特定の状況下での営業を制限するに過ぎないから,人格的利益と密接に関連するとまではいえない。よって,営業の自由は,経済的自由権と解すべきである。

そうであれば,経済的自由権たる営業の自由に対する規制が

① (国民の生命及び健康を保護するといった,警察的措置たる)消極目的である場合には,比例原則の観点から,Ⅰ. 規制が必要かつ合理的であり,Ⅱ.より緩やかな手段で同じ目的が達せない場合にのみ,規制が正当化される。 〜薬事法判決(厳格な合理性の基準)

② (社会的弱者の救済や格差是正といった)積極目的である場合には,その目的から,原則として専門的知見に基づき立法府の裁量のもと規制が行われることが望ましく,規制が明白に不合理でない限り,正当化される。 〜小売市場判決(明白性の基準)

0 件のコメント:

コメントを投稿