2022年3月12日土曜日

刑法各論 構成要件まとめ(随時更新)

おことわり:「若しくは」「又は」等は条文と異なる場合や、本稿内での表記ゆれがある可能性がありますが、その点は修正の予定がありません。また、「『殺し』た」等の表記をすべき場合にも「殺す」「殺した」等の表現をしており、条文引用として不正確な記述を含みます。この点も修正する気はありません。

採用している説が多数説や通説、判例とは限りません(原則判例>通説で採用していますが、答案上有利な説や、個人的に納得している説を採用している場合もあり)。網羅には基本刑法か条解でも読んでください。


・個人的法益に対する罪

ー生命に対する罪

199 殺人罪

保護法益:人の生命

①人を:自然人に限る、刑法では一部露出説を取る(民法と異なる)、胎児は含まない

②殺した:三徴候説(心肺停止、呼吸停止、瞳孔反射の喪失)


202前 自殺関与罪

①人を

②教唆しもしくは幇助して自殺させる

自殺関与罪の正当化、処罰根拠については深入りしない(自殺有罪説が説明しやすいと個人的には思うが)


202後 同意殺人罪

①人を

②その嘱託(=被殺者が殺害を依頼すること)を受けもしくはその承諾(=被殺者が殺害の申込みに同意すること)を得て殺す


212 (自己)堕胎罪

保護法益:胎児の生命+妊婦の生命身体

①妊娠中の女子が

②薬物を用い、またはその他の方法により

③堕胎(=胎児(=受精卵が母体に着床して以後、分娩期まで)を母体内で殺害、あるいは分娩期に先立って母体外へ排出すること(大判M44/Dec./08))した


213 同意堕胎罪/同意堕胎致死傷罪

①女子の嘱託(=女子が胎児の殺害や傷害を依頼すること)を受け、または承諾(=女子が胎児殺害や傷害の申込みに同意すること)を受け

②堕胎させた

(213 同意堕胎致死傷 ③よって女子を死傷させた):胎児の死亡は「堕胎」で表されるので、ここでの致死傷の客体は母体たる「女子」に限る


214 業務上堕胎罪/業務上堕胎致死傷罪

①医師、助産師、薬剤師または医薬品販売業者が

②女子の嘱託(=女子が胎児の殺害や傷害を依頼すること)を受け、または承諾(=女子が胎児殺害や傷害の申込みに同意すること)を受け

③堕胎させた

(214 同意堕胎致死傷 ④よって女子を死傷させた):胎児の死亡は「堕胎」で表されるので、ここでの致死傷の客体は母体たる「女子」に限る


215 不同意堕胎罪 / 216 不同意堕胎致死傷罪

①女子の嘱託(=女子が胎児の殺害や傷害を依頼すること)、または承諾(=女子が胎児殺害や傷害の申込みに同意すること)を「得ないで」

②堕胎させた

(216 ③よって女子を死傷させた)


217 (単純)遺棄罪 / 219 (単純)遺棄致死傷罪

保護法益:人の生命、身体(生命までは危害が及ばない場合を含むかは処罰範囲が広くなることから争いがあるが、傷害罪の後に置かれていること、法定刑が比較的軽いことから身体も含むとする説を採用する)

①老年、幼年、身体障害または疾病のために扶助を必要とする者を

②遺棄(=保護を要する者を保護のない状態に置くことにより、その生命身体を危険に晒す移置をいう:置き去りを含まない)した

(219 ③よって人を死傷させた)


218 保護責任者遺棄罪 / 219 保護責任者遺棄致死傷罪

①老年者、幼年者、身体障害者、または病者を(217/219と明確な差なし)

②保護する責任のある者(=要扶助者の生命身体に対する排他的支配を実質的根拠とし、親子でも法令上の親の監護義務(民820)から即認めることは避ける。救護の引受け等も排他的支配性から説明できる。ひき逃げ等の場合、一般道で普通に人が通るところならば「排他的支配性」が認められないため、救護義務違反にとどまって保護責任者遺棄は成立しない)

③遺棄(=保護を要する者を保護のない状態に置くことにより、その生命身体を危険に晒す移置に加え、置き去りも含む)し、またはその生存に必要な保護をしなかった(=場所的隔離をせずとも、生存に必要な保護をしないこと、間近にいて世話をしないこと)

    →遺棄について整理すると、218/219は「移置、置き去り、不保護」、217/219は「移置」である


ー身体に対する罪

208 暴行罪

保護法益:身体

①暴行(=人の身体に向けられた不法な有形力の行使、非接触の場合傷害の危険を有する行為(日本刀振り回し事例)、接触の場合傷害の危険は不要(:不快嫌悪の情を催させるに足りる行為(cf.塩まき事例)(福高判S46/Oct./11))を加え

②傷害するに至らなかった

~暴行罪に未遂がないことは注意、傷害罪の未遂としても機能することに注意


204 傷害罪 / 205 傷害致死罪

①人の身体を

②傷害(=生理機能傷害、頭髪事例を傷害罪とする完全性侵害説が有力反対説だが、判例上完全性を侵害するが、生理機能を傷害しないものは「暴行」)(=PTSD、長時間の意識障害も傷害結果として足りる)した

(205 ③よって人を死亡させた)

~暴行罪の結果的加重犯、未遂は暴行罪、暴行によらない傷害罪あり(詐称誘導による転落誘発、頻回の無言電話による鬱、奈良騒音事件(1つ1つは暴行とはいえない程度の騒音を出し続け、ついには睡眠障害に陥らせた)、性病の意図的な感染等)

~暴行によらない傷害罪の場合は「傷害の故意」が必要である(暴行罪にあたらないのだから、この場合だけは「暴行の結果的加重犯なので暴行の故意で足りる」が使えない


206 現場助勢罪(あんまりわかってない)

①傷害罪、傷害致死罪の犯罪が行われるにあたり

②現場において

③勢いを助けた


207 同時傷害特例

0 意思連絡なく(共犯との区別)

①2人以上で(=同時、あるいは時間的・場所的連続性ある場合)

②暴行を加えて

③人を傷害(=含:致死 除:殺人等傷害以外の罪)した場合

④それぞれの暴行による傷害の軽重を知ることができず、またはその傷害を生じさせた者を知ることができないとき

~同時犯だが共犯が取れないパターンでは検討必須。疑わしきは被告人の利益に→どちらが傷害結果を生じたか分からないときは2人とも暴行罪までとなってしまうため

~詳細は共犯周りの別ポストに譲る



0 件のコメント:

コメントを投稿