2022年5月19日木曜日
電子計算機使用詐欺罪【話題のやつ】
2022年5月9日月曜日
翻案権の侵害について
(言語の著作物の)翻案とは、 既存の著作物に依拠し、かつその表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接するものが既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為。(江差追分事件)
→複製と新たな独立の創作との間の行為である
→原著作物そのものであれば複製であるし、「表現上の本質的な特徴」を直接感得できない程度であれば新たな創作(インスパイア系)である
認定方法:答案上は「2段階テスト」を採用する(理論的にはこちらが正しい流れである上、定型的に処理できる)
原著作物Xの著作物性を認定→(Xの創作的部分を認定)→侵害被疑作品YにXの創作的表現が翻案されているかを判断
判断の際には直接感得性説(島並説)を用い、X作品の創作的表現がY作品に再生されること+Y作品の中でもX作品の本質部分が埋没せず直接感得できることが必要(後者を不要とする創作的表現説(田村説))もあるが、江差追分事件から考えると直接感得性説が有力か)
2022年5月8日日曜日
公表権侵害の認定
著作権法18条で保障される著作者人格権のひとつ、公表権の侵害について。侵害されたと認定される場合、112条による差止め、民法709条による損害賠償請求、及び115条の名誉回復措置ができる(可能性がある)。
公表権は未公表である(公表権を侵害してなされた公表はノーカン)の場合に存在し、「公表」とは4条1項から、発行(3条1項)あるいは、著作権者による上演……の方法で公衆に提示された場合を指す。そして、発行(3-1)とは、①その性質に応じ公衆の要求を満たすことのできる相当程度の部数の複製物が、②著作権者または許諾を得た者によって、③作成され、頒布されることをいう。
答案上はこの「公表」該当性が問題となり、関連する判例として「中田英寿事件」がある。
中田英寿事件から、答案の流れ
中田英寿のエピソードをまとめた書籍に、氏がかつて執筆した、学年文集に掲載された文章が掲載されたところ、この文章の公表権が侵害されているとして問題となった。
<上記公表権の保護~「公表」定義は省略>
本件において、
①文章は「学年文集であり」、当該学校の教諭及び同年度の卒業生全員に対し、300部以上の「相当程度の部数」が
③作成されて頒布されており、
②氏はこの学年文集に本件文章が掲載されることを承諾していたのであるから、③のような形で公表されることを同意していたということができるから、公表権を侵害しない。
著作権法ー著作物該当性
著作権法を使う中で、最初に判断することは「著作物該当性」です。著作物に該当しなければ、その後の議論を待たずして適用外となることは当然であり、答案上はあまり争いがないか、結局認められる場合が多い要件ではある一方で、現実世界では「これって著作物?」と聞かれたら詰まってしまうような問題も多いところですから、順を追って著作物該当性を検討してみます。
著作物該当性は「著作物」の定義(2条1項1号)「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」から、①思想感情、②創作性、③表現性、④学芸性の4要件があるとされています。また、10条1項各号に著作物が例示されていますが、これは類型ごとに特殊な権利が認められる場合に役立ってきます(映画の著作物など)ものであって、ひとまず2条1項1号に該当するかを判断することは重要です。
なお、10条2項(雑報、時事報道)、10条3項(プログラム言語、規約、解放)は「著作物でない」とし、13条(法令、告示、訓令、通達、判決、決定、命令、公的翻訳物、編集物)は「著作物であるが、権利の目的とならない」とされています。前者(10条)は確認規定とされ、そもそも②創作性要件に欠けるものであって、後者(13条)は国民に広く知らしめる必要性から、意図的に除外したものである。もっとも、この「法令」を分かりやすくまとめ、情報を付加した「判例六法」などは編集著作物である(タウンページ事件も参照のこと)。
①思想感情要件
=人間の精神的活動(からくるものであること)
単なる事実、自然物、人間以外の動物によるもの(サルがスマートフォンを奪って撮った自撮り写真が有名)が除外される。
近年問題となっているのは、「AIによる創作物」であり、原則これは①要件を満たさないとされる。これは今後議論の余地はあるが、現段階ではこうなっていると納得しておきたい(特に、試験前に気になって考え始めてはいけない)。
答案戦略上、上記3つに当てはまらなければ気にする要件でもない。当落予想表事件(選挙の当落予想を○△▲の3つで行った当落予想表について、当落予想も人間の知的生産活動の結果であるとして①要件を肯定した)を参照のこと。
②創作性要件
=個性が現れていること
表現の「優劣」や「価値」「芸術性」は要求されない。幼稚園児の落書きから、超有名芸術家の作品まですべて法のもとに同価値である。なお、データベース、プログラムの著作物の「創作性」=「個性」とは何か?について、これらはむしろ合理化の末没個性的であることが求められる場合すらあるが、書き方やまとめ方に「選択の幅」がある中でその方法を選択したことに創作性を見出す「選択の幅理論」(中山信弘先生の説)が説得的。
ラストメッセージin最終号事件(雑誌の最終号に載っていた編集部からの挨拶文をまとめた書籍において、その載せられたメッセージに著作物性があるか問題となった。休刊廃刊の告知、感謝やお詫びの念、編集方針の骨子、再発行の予定、同社関連雑誌の宣伝は当然含まれるもので、これをありふれた表現で記載したものは「創作性がない」。一方で、それ以外のメッセージが含まれているようであれば、創作性は肯定されるとした。)を参照のこと。
版画写真事件(平面の芸術作品を撮影した写真に著作物性(創作性)があるか問題となった。平面の芸術作品について(記録として撮影するに)は正面から撮影する以外に撮影位置は正面以外なく、その他撮影者が何かを付け加えるものではないから、原版を忠実に撮影するものである限り、創作性がない。)も参照のこと。この判例に対して、祇園祭写真事件(祇園祭を撮影した写真について、確かに同じ場所で撮影すれば誰でも同じ作品を作りうるとしても、動きのある祭りをどこでどのように撮るかというところ、そして露光時間やレンズ、フィルムの選択にも撮影者の創作性は現れるから、創作性がある。)との対比も検討のこと。
③表現性
=表現アイデア二分論から、「表現」のみを保護する
昨今、物語の構成が似ているとしてパクリだと問題になることも多いが、これは「アイデア」に過ぎず、著作権法によって保護されるものではない。例えば、我々の世界の飲食店が突然異世界に繋がり、異世界のお客さんにこちらの料理を提供して喜ばれ、交流を深める話という点で同じ異世界居○屋と異世界○堂があっても問題ないし、異世界転生するきっかけがトラックに轢かれがちであっても問題ない。とはいえ、これは程度問題に行き着くものであり、究極的にはキレイに二分できるものでもない。また、続編を作ることも許容される(著作権法上は)。アルセーヌ・ルパンとルパン三世とルパンの娘がいてもいいのである。この点については、scene a faireの理論(ありふれた情景の理論)として取り上げられる場合があり、文芸作品を中心に、「表現」であるとしても、テンプレ描写については保護しないという例外を認めるものである。
江差追分事件(ノンフィクション小説を原作としたNHKのドキュメンタリーについて、本に依拠してナレーション等を作成したとしても、表現上の本質的な特徴を直接感得できない限り、翻案権の侵害にはならず、また、流れ自体は「アイデア」であるとした)を参照のこと。
釣りゲーム事件(GREEの釣り★スタとDeNAの釣りゲータウン2について、三重円を魚が動き、中心で押すことで魚を釣るということは「アイデア」であり、三重円を用いることに他の釣りゲームとの差、独自性があるとしても、ダーツや弓道等同心円を的にすること自体はアイデアの範疇であるとした)も参照のこと。
金魚電話ボックス事件(電話ボックスに水を満たし、金魚を入れた作品と、それを真似した作品について、電話ボックスに水を満たし、金魚を入れることまではアイデアとしたが、受話器を固定しそこから気泡を発生させ(たように見せ)ることには創作性があり、全体として創作性ある芸術作品といえる)も参照のこと。特に釣りゲーム事件と金魚電話ボックス事件をみると、いかにアイデアと表現の分離が困難かが理解できる。電話ボックスに金魚を入れるということ自体が表現でない理由はイマイチ分からない……。創作性は類似性判断の基礎にもなり、本事件でも創作性のある部分についてのみ類似性判断、依拠性判断が行われているから、重要な判断ではある。答案上は「創作性あり」「なし」の判断の是非はともかく、「あり」としたなら類似性判断をし、「なし」としたなら判断しない、という一貫性のほうが重要かと思われる。うっかり判断しがち(2敗)。
④学芸性
=知的・文化的精神活動の所産全般(当落予想表事件)
こじつけでも良いので、大体どれかに当てはまることになる。また、どれに該当したとしても「応用美術」に絡まない限り意味はない。
・応用美術
本ブログでも以前取り上げた「タコの滑り台」判決でも登場した応用美術。この概念は法律上明文で示されたものではないが、判例上、学説上はおおよそ認められているもので、鑑賞性と実用性を同時に兼ね備えているものを指す。対して、純粋に鑑賞するしかないものは「純粋美術」と呼ばれ、一般的な絵画や彫刻などが含まれる。応用美術の範囲は広く、究極的にはどんなものにも鑑賞性を見出すことは可能ともいえる(車や電車、パソコンといった一般人にとってはほぼ実用性の塊のようなものでも、そこに美を見出す人はいる)から、この世のすべての実用品が応用美術といっても過言ではない。
応用美術を含む実用品は工業デザインを保護する意匠法の管轄であり、原則として著作権法の管轄ではない。一方で、実用性はあるものの、美術品としての扱いがメインとなる一部の陶磁器や宝飾品、のように、著作権法で保護したほうが良いものも存在する。特に、一点モノの壺などはほぼ当然に美術の著作物であると解される。すると、一番問題となるのが「量産品」であってそれなりに「鑑賞性」もある「応用美術」である。
学説では色々な議論がなされているが、判例では「純粋美術同視説」「分離可能性説」といった考え方が基本となっている。これは、それ自体鑑賞対象として一般的なものを保護し(人形や仏像彫刻など)、それ以外のいわゆるプロダクトデザインは原則排除する結果となる。対して、TRIPP TRAPP事件はこの流れから外れており、「分離可能性説」を否定(実際分離して考えるのは難しいでしょ?という理由)し、保護の対象を広げた。現状この判決だけが浮いているため、答案では知っていることを示しつつも採用する必要まではないと考える。
2022年5月5日木曜日
会社法短答:曖昧だった知識メモ:株式編
会社法に本試短答はないだろというのはおいておいて。知識確認としての短答対策は大事(今更)。
会社は取得請求権付株式について、株主からの取得請求を受けて取得する場合であっても、分配可能額を超えてはならないし、取得によって欠損が生じた場合、職務関係事業執行者は、注意義務違反がなかったことの証明に成功しない限り、465-1-4による欠損填補の責任を免れない
単元未満株主の192-1による買取請求は、単元未満株主の利益尊重の観点から定款によって制限できない(189-2-4)
単元未満株主に議決権を付与することは定款によっても不可能である
他人の承諾を得て他人名義で募集株式の引受けを行った場合、株主は名義人ではなく出資者(名義の借用人)である
吸収合併の際、存続会社は株式の割当を受けない(749-1-3())
株式無償割当ては自己株について対象外である(186-2)
譲渡制限株式の相続が相続人2人以上の相続にかかり、未だ遺産分割協議も会社に対する権利行使者の通知もなされないとき、会社に対する株主総会決議無効確認の訴えの原告適格はない
単元株の廃止、単元株の減少を内容とする定款変更は株主総会特別決議を必要とせず、取締役(取締役会)の決議、決定で足りる
議決権に関して利益供与を受けた一般の株主に対する返還請求は847
株主に株式の割当を受ける権利を与える場合、公告を持って通知に代えることはできない(201-3/-3/202-5)
2022年5月3日火曜日
民法短答:曖昧だった知識メモ(不法行為編)
民法短答で曖昧だった知識についてのメモです。筆者が覚えてなかっただけですが、人が間違えたとこはまぁ間違えやすいだろってことでひとつ。
H24-1 補助、保佐、後見状態はダブってはならない。例えば、被補助人に後見開始の審判をする際は、19-1から補助開始の審判を取り消さねばならない。
所有権に基づく物権的請求権の行使には、所有権が移転していれば足り、引渡しや登記移転は必要ない。不法行為者は177条の第三者でもないので、第三者対抗要件も関係ない。
711条の遺族固有の損害賠償請求について、内縁の妻からの慰謝料請求は認められる。
不法行為による後遺障害発生後に別の要因で死亡したとき、逸失利益については考慮しない一方(継続説)既に一定の内容で確定しているため。死亡の原因となる具体的事由が存在し,近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り)、介護費用においては積極損害の一種であり、実際に生じうる出費を補填するものであるから、死亡により介護が必要なくなった場合には切断される(切断説)。
被害者側の過失に関して、幼児の監護を委託された被用者(保育士等)は含まない。被害者と一体をなす両親等に限られる。
責任無能力未成年の失火につき、失火責任法との関係での「重過失」は714-1で監督義務者にかかり、「未成年者の監督について重大な過失」があったかに変わる。責任無能力者についてはそもそも「過失」を論じること自体失当であるから、「重過失」を責任無能力者の行動について考えることもできない。
715使用者責任は同一の使用者の下で雇用される被用者であっても、その「第三者」同士となる。715において当事者は「使用者」と「当該被用者」のみである。これは共同担当者であっても変わらない。
共同不法行為の場合、共同不法行為者間での求償は自己の負担部分を越えた額についてのみ認められる。
単一の事故で生じた損害賠償相互間での相殺は認められない。現実の弁済を受けさせることが目的だからである。
共同不法行為の場合で、AとBが共同不法行為者、CがBの使用者であり使用者責任を負う場合、Aが全額を弁済したときAはBの負担分につき全額を使用者Cに求償できる。逆に、使用者が全額支払った場合は第三者に第三者負担分全額を求償できる。すなわち、第三者、被用者の共同不法行為において、第三者との関係では被+B21用者=使用者となる。
717-1但、所有者の工作物責任について、所有者の責任能力は問題とならない。
所有者の工作物責任において他に本来責任を負うべき者がいる場合には、求償権が発生する。
一つの被害につき一般不法行為責任を負う者と工作物責任を負う者(例えば、手抜き工事をしたAと、所有者/占有者B)が併存する場合、被害者に対して不真正連帯債務を負う。よって、被害者は片方に全額を請求することができる。