2012年1月27日金曜日

[連載]もう歌しか聞こえない[オリジナル小説]

いまから連載で現在製作中のノベルゲーム、「もう歌しか聞こえない」のトゥルーエンドScenarioを載せていきます。

もしよかったら読んでやってください。 テストプレイとキャラ絵、背景を出来れば無料でやっていただける方、募集中なのでコメントにお願いします。

 

第一回

 

プロローグ  Goddess of Sadness (01)

  

 

ロミオ、ジュリエット。

悲劇の主人公は私の友達。

シンデレラ、ラプンツェル。

幸せになったら私の敵。

もう歌しか聞こえないよ。

音のない歌。小さな詩。

ねえ、あなたも私の友だちになってくれない?

「はぁ…」

正直疲れた。自分の七割はあろうかという荷物を抱え、朽ちた木々の上を重たい足取りで歩く。

家の門をくぐってから玄関まで五分はかかる広い敷地だが、建物はそう大きくない。とはいえ、小学校中学年に間違えられるこの少女からするとそれなりの大きさである。

「ただいま・・・」

答える声はない。

「ただいまーって言ってんのに」

どさっ。

荷物を下ろし、乱暴に靴を脱ぎ捨てると、台所とは名ばかりのコンロを無理やり置いただけの流し台に置く。

ここはもともと病院らしかった。不気味な、白い棚がまだあどけない少女には不釣り合いに大きい。

「まぁ、でも、仕方ないかもね。」

彼女の名は春暮月香。ハルクレルコ。この名前は便宜上のものに過ぎない。と言っても、ほんとうの名前があるわけでもない。

というのは、彼女は一応生島手鞠というのが本名だ。しかし、どこにいるかわからない母親がメモと共に2歳くらいの月香を山中に置き去ったためである。そのメモにあった名前が生島手鞠。拾ってくれたおじいさんがつけた名前が月香(げっか)。しかし、なんか嫌だったのでおじいさんの苗字春暮とつなげて読めるように月香(るこ)としたのである。

で、彼女、日本国籍が、無い。

といってもアメリカ人でも無し、ドイツ人でも無し、アンティグア・バーブーダ人でもない。

-存在しないはずの少女-

こう呼ぶのが適切かもしれない。しかし、彼女はまだただ単に「捨てられたから戸籍がない」としか思っていないらしかった。

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