2022年4月19日火曜日

共犯周りの整理

共犯周りを整理します。理論対立も多いところですが、原則判例通説を採用しており、重要な反対説には言及すべきと考える場合のみ触れます。なお、予備校答案等と真っ向から反対する説を採用している場合もありますが、答案内で筋が通らない書き方(極端な話設問1で結果反価値に立ち、設問2で行為反価値に立つ、など)は出題趣旨等でも批判されるところなので、特に関連して出題されるような分野は齟齬がないような説を選択しています。


(短答知識)共犯の種類

共犯にはもともと複数の者が関与することを構成要件上予定している必要的共犯と、それ以外の単独犯で可能な犯罪を複数で共同して行うことで成立する任意的共犯がある。また、必要的共犯は1つの対象、目標に複数で挑む形の集合犯(多衆犯、集団犯)(e.g. 内乱罪)、1対1か1対多が想定されている対向犯(e.g. 重婚罪、賄賂供与罪ー賄賂収受罪)があり、任意的共犯は共同正犯、教唆犯、幇助犯の3種類となる。

・対向犯の教唆犯

対抗犯の場合、相手方はその対応する罪(同罪含)で処罰されることが立法の時点で予定されているのであるから、例えば贈賄者を収賄者の共犯(任意的共犯)として処罰することは許されない。もっとも、対抗犯の一方のみを処罰する規定しかなく、もう一方に罪が無いタイプ、例えばわいせつ物頒布罪に対して「わいせつ物を要求した者」に同罪の教唆犯が成立しないか、問題となる。この点、わいせつ物頒布罪の立法時点で頒布者に対して受領者がいることは当然分かっていたにもかかわらず、あえて受領者を罰する立法をしていないことから、立法者の意思として原則的に不可罰とすべきである。もっとも、受領者が執拗に迫ったり、特に積極的な働きかけをして実行行為者に罪を犯させた場合は、別個に検討する余地がある。このような場合、実行行為者には頒布の意図はなく、所持しているのみであったのに、受領者が強く迫ったことによって、「存在しなかった犯意を生じ」、ついに行為に及んだものであるから、通常のわいせつ物頒布に対する受領者とは異なり、あえて教唆犯として成立させることが適当である。

・同時犯

複数の者が、共謀「なくして」、同一の機会に、同一の客体に対して、同種の犯罪を実行するもの。すなわち、共謀のない(実行)共同正犯的なものである。

・同時犯の特殊ケース:同時傷害の特例(207)

これは、単に同じ機会に実行したに過ぎず、共同正犯の要件たる共謀にかけるから、一部実行全部責任の原則が働かず、個別の実行行為と因果関係のある結果にのみ責任を負う。しかし、傷害罪については行為者間の意思連絡、結果との因果関係の立証が困難な場合が多いため、立証責任の転換として、共謀がない場合でも「共犯の例による」旨規定し、意思連絡について擬制するものである。

この趣旨から同時傷害の特例は、①2人以上の者が同一人に対し②共謀なく③それぞれの暴行のいずれによって傷害結果が生じたか不明な場合に適用される。なお、本条は傷害罪、その結果的加重犯たる傷害致死罪に拡張される(判例)が、強盗致死傷、強姦致死傷等の傷害がくっつく犯罪には拡張しない(判例)。危険運転致死傷罪の論点は法改正でどうなったか分からないが、特に変わってないんじゃないでしょうか(厳罰化されたのが改正の主体なので)。

・教唆犯と幇助犯の錯誤

既に犯意を生じていることを知らずに教唆するつもりで唆したところ、既に犯意を生じていたのを強めたにすぎない(→幇助)場合、より軽い罪である幇助で処罰する。


・間接正犯(×共犯)

まず、間接正犯は共同正犯ではないし、教唆や幇助犯ではない。あくまで間接正犯者が「正犯」であり、(いわゆる実行犯という意味での)実行行為者は単なる道具に過ぎず、無罪である。(簡単な例では毒入りと知らせずに看護師に注射器を渡し、看護師はそのまま気付かずに注射しもってVが死亡した場合の、毒を入れた人物が間接正犯)

・間接正犯、錯誤

被利用者は完全な道具であり、原則として「犯罪を実行している」ことを知っていてはならない。先程の例で看護師が途中で気付いたとして、あえて看護師がそのまま(未必にせよ)殺害の故意をもって注射したとする。この場合、毒を入れた人物は間接正犯だと思っているが、現実には教唆となっている。よって、(おそらく一種の錯誤として)軽い限度の教唆犯を成立させる。(実行の着手を利用者の行為開始とする説に立つと、実行の着手時点では被利用者は知情でないので、間接正犯とする結論もあり得るが、遡って錯誤が生じた場合と同様に考えることで回避する。そうでないと、おとり捜査、コントロールド・デリバリーで厄介な問題を生じる)

・間接正犯、責任なしの実行行為者

犯罪を実行していることを知っていても、なお間接正犯の成立を検討する場合がある。1つは、極度の支配を受けており、実行する以外に手段がないようなときである。これは、反対動機形成の機会が存在しないから、違法性に欠けるとして、間接正犯となる。例としては、逆らったら確実に殺されるような状況で、目の前で第三者を射殺するよう求められた、というような場合である。

もう1つに、意思能力を欠く子供(など)を利用する場合がある。これは、「原則として」実行行為者が「何をやっているか分からない」中、実行しているため、反対動機形成の機会がないから道具性を肯定し、間接正犯となる。但し、これは「善悪の判断ができない」場合にのみ成立するものであって、「刑事無責任」の年齢とは異なってよく、判例ではおおむね14歳を境目としてそれ以上を道具とした場合、「悪いことをしている」ことは理解できるはずであるとし、指示者を教唆犯とする。

・間接正犯、その他のパターン

a. 実行行為者が身分上正当業務行為として行いうることを利用して、正犯者では適法に行い得ない行為を実行させる場合、間接正犯となる(堕胎罪など限定的な場合)

b. 非身分者が身分者を利用して身分犯の間接正犯となるか。→原則としてならない。但し、この論点は虚偽公文書作成罪については判例があるが(非公務員が公務員を利用して虚偽の公文書を作出させた場合、共同正犯とならず、作成権限者でない公務員が権限ある公務員を利用して同様の行為を行った場合、間接正犯とした)、それ以外は寡聞にして知らない。常習賭博者を道具として賭博するとかいうカイジみたいな世界なら問題になったかもしれない。


・共謀共同正犯

判例で明確に認める方向にあるから、今更否定する論述は望ましくない。

①共同実行の意思 ②正犯意思 ③共謀 ④基づく実行

①共同実行の意思 : 2人以上の者が共同してある特定の犯罪を行おうとする意思。犯罪の細部まで認識していることは必要ない。

②正犯意思 : 自己の犯罪として関与したか否か。共犯者のため、と思っていることだけで直ちに否定されるものではない。地位、身分から主体的に犯罪を実行している場合、犯罪の結果としての分け前をもらう約束などで認定する。

③共謀 : 暗黙でもよく、順次共謀でもよく、現場共謀でもよい。なお、共謀の射程の問題として、暴走した共犯者が共謀の範囲外の行為を行ったとき、共犯の範囲から外れることがあり得る。例えば、ゴットン師事例(当ブログでも紹介済み)などが類似の議論である。一方で、共謀の範囲からは一見外れていても、拡大にいたる経緯や予測可能性からして、先程の「詳細に認識している必要はない」というところからも、予定外のことすべてが範囲外というわけでもない。現場ではこの悩みを示しつつどちらかに転ばせれば良い。

もちろん、結果的加重犯については悩むまでもなく責任を負う。

④基づく実行 : 実行して下さい。

・片面的共同正犯

甲は乙と共同で犯罪を実行する予定で参加したが、乙との共謀はないし、乙は参加自体知らなかった(現場共謀もない)場合。共謀がないので共謀共同正犯ではない。

・承継的共同正犯

先行者の行為中、先行者の行為を知りつつ後行者が参加してきた。後行者の責任範囲はどこまでか、という問題。これは犯罪によって結論が異なる。なお、全く認めない説もあるが昭和末期から判例は認めているので(ry。

a. 後行者参加後の暴行が、先行する暴行による傷害を相当程度重篤化させた場合。先行者の暴行による傷害結果について承継的共同正犯を成立「させなかった」

b. (a判決の補足意見)強盗、恐喝、詐欺等では先行者の行為の効果を利用することで犯罪を成立させる場合があり、その場合においては承継的共同正犯が成立する余地があるとした。

b1. 単純一罪の場合、先行者の行為時点では全く犯罪が完成しておらず、後行者の参加後に継続して働きかけが行われ、結果犯罪が既遂となる場合が想定されるので、概ね承継的共同正犯が成立する。

b2. 強盗罪のような結合犯の場合、先行者が暴行、脅迫中に後行者が到着、反抗抑圧状態を利用して財物奪取を共同するようなものが考えられるが、これを認めた地裁判例(東京地判H07/10/09/判時1598-155)がある。これを認める場合には、後行者が積極的に利用したから認めるんだと強くアピールすることが重要となる。

b3. 先行者の行為だけで結果が生じたことが明らかな場合に、後行者の責任が問題となる。例えば、強盗致傷の先行者がおり、既に致傷結果は生じている。そこに来た後行者は反抗抑圧状態を利用して財物奪取を行った。このとき、成立するのは先行者に「強盗致傷」、後行者に「強盗」である。対して、先行者が致傷していて、後行者が参加後更に暴行を加え、そのどちらの暴行によって死亡したか分からない傷害致死の場合、傷害致死の承継的共同正犯を肯定した(名古屋高判S47/07/27/刑月4-7-1284)。

他には、暴行の結果的加重犯として行われる傷害罪について、先行者の暴行で傷害結果が生じており、後行者参加後の暴行は軽く傷害の結果は生じ得なかったという場合には承継的共同正犯を否定した事例、理論、量刑上の問題にすぎないが(罪名は変わらないが)先行する暴行で傷害結果が生じており、後行者参加後にも傷害の可能性がある暴行があった場合、先行者による傷害として分離できるものは因果関係がないので、後行者との承継的共同正犯の範囲外とするものがある。なお、ここで軽重を知ることができないときは207同時傷害特例があるので、結局多くの場合罪名は問題とならない。


・過失犯の共同正犯

指揮関係や同僚関係にあって共同の注意義務を負っている場合に想定されるが、これを共同正犯と真っ向から認める判例があるといえるかは微妙である。ともあれ、この場合はどちらにも注意義務、結果回避義務を肯定できるはずであるから、同一の物に対する注意義務を怠ったというだけなので過失の共同正犯を認めなくても認めても致命的な違いは出ないと思う。


・共同正犯の防衛

侵害者それぞれについて要件を満たすか検討する必要がある。甲の侵害が急迫していても、乙の侵害は急迫していない可能性はある。

2022年4月18日月曜日

会社法論述まとめ(簡易版・独立記事にするほどでもない子たち)【随時更新】

 ・譲渡制限株式を承認なく譲渡した場合:最判48/06/15

非公開会社における株式の譲渡制限の目的は「閉鎖的な会社である非公開会社にとって、会社にとって好ましくない者が株主となることを避ける」というものである。一方で、株式は財産的価値としても把握され、(暇なら書く→かつ会137条1項、138条第2号は譲受人から会社に対して承認請求をするという設計になっている以上)当事者間では譲渡を有効とし、会社との関係で無効とする相対的無効説に立つべきである。

このことから、会社は譲受人を株主として扱えば足りる。


・自己株式取得の財源規制

自己株式の有償取得は、実質的に株主に対する払戻しとなるため、分配可能額(

461-2)を超えてはならないという財源規制がある(461-1-1~7/166-1但/170-5)。

→違反した場合

・財産的な話

会社財産の確保、及び財源規制という法令に違反することから、830-2の対象ともなっており、無効である。また、譲渡人は会社に対して不当利得返還義務(民703/704)を負う。

なお、無効の効果として会社は譲渡人に株式を返還する義務を負うが、既に処分してしまっている場合など、返還不能な場合は時価相当額を返還することになり、逆に会社にとって不利益となる可能性もある。よって、この場合の不当利得の「利得」を売却代金と考え、仮に高騰した場合でも値上がり分を返還する必要はないとすることで、会社の不利益を回避する。また、譲渡人が持つ会社に対する返還請求権との同時履行(民533類)の主張が考えられるが、これについては同時履行の抗弁権を排除する特別規定であるとする。

・責任的な話


・仮想払込\預合

帳簿上、払込取扱銀行が発起人に金銭を貸付け、設立中の会社の預金とするものの、弁済完了までその預金を引き出さないことを約するもの。現実に会社財産が増加するのではなく、会社債権者や他の引受人の保護の観点から、この払込は無効である(通説)。

965で刑事罰が課されており、条文番号的にはとっ離れているので注意。

・仮想払込\見せ金

第三者が発起人に金銭を貸付け、株式の払込みに充て、成立後に発起人が会社から貸付けを受け、第三者に弁済するもの。こちらは明文で否定されておらず、効力が問題となる。実質的に考えると、仮想払込というものは会社設立にあたって資本金とすべく払い込まれた金銭の実体が無く、会社債権者や他の引受人の保護に欠けるため、問題となるのであったから、会社財産の基礎を危うくさせるようなもののみ特に無効とし、それ以外は有効とするのが理にかなっている。

よって、会社成立後、借入金を返済するまでの期間の長短、払戻金が会社資金として運用された事実の有無、借入金の返済が会社の資金関係に及ぼす影響の有無等を基礎として、総合的に判断すべきである。

・仮想払込の責任関係

見せ金をした発起人・引受人→仮想した金額を会社に支払う義務52の2-1(発起人)、102の2-1/102-3(引受人)、任務懈怠責任53(発起人)

関与発起人→仮想払込み者と同じ(無過失面積52の2-2/103-2)

金銭取得の取締役の責任→任務懈怠責任423/429+推定423-3-1


・設立中の会社

設立登記によって成立する(49)以上、設立登記前は権利義務の主体となり得ないのではないか。この点、現実的には設立登記以前に社団を形成したり、法人格を取得したり、事務所予定地の賃貸借等設立に必要な行為をしたりといった行為の主体となることが求められる。よって、成立後の会社に帰属させるべくしてこれらの行為の主体として、成立後の会社と実質的に同一な「設立中の会社」という概念を導入する必要がある。

~設立中の会社は上記の目的を達すべく特に認めるものであるから、その発起人の権限にも自ずから限界が存在する。

①会社の形成・設立それ自体を目的とする、定款作成や創立総会の招集→当然認められる

②会社の設立にとって法律上、経済上必要な、事務所の賃借や事務員の雇用→定款で認められた設立費用の範囲内で認められる。設立費用の範囲外についてまで認めると、設立中の会社が一旦建て替えた上で発起人に求償する必要に迫られる。また、一切認めないとすると逆に発起人が全額立て替えて会社成立後に求償することとなる。もっとも、現実的な要請として設立にかかる一定の支払いが生じることは当然であるから、設立費用を観念し、その範囲では発起人に利用権限を与えるべきである。(→設立費用を超えてしまった場合、どの支払いが「認められない」支払いであるか問題となるが、この点時系列的に超えた時点は判明するはずであるから、それによって判断すれば足りる。(相手方の予測可能性は害していると思われるが、突っ込むと泥沼なので書かない。)

~財産引受け、設立後の広告の契約、商品の契約等

28-x-2によって定款にない財産引受けは無効となる。よって、設立中の会社が第三者と契約したが、定款の範囲外であった場合は無効となり、発起人に無権代理類推(民117類)を追求する(理論上はね)。

なお、財産引受け以外については財産引受けの規定を類推適用する説と、無関係にとにかく無効であるとする説があるが、正直どっちでもいい。とにかく定款にない財産引受け、設立に必要ではない行為がなされた場合は書いとけばいい。



2022年4月16日土曜日

違法/不公正な募集株式の発行がなされた場合の対策

違法、あるいは不公正な募集株式の発行がなされた場合の答案。

まず、取りうる手段は

○ 差止め請求権(会社210)

○新株発行無効の訴え(会社828-1-2)

○新株発行不存在確認の訴え(会社829-x-1)

 ○引受人に対する差額請求(会社212-1-1←847)

○取締役に対する責任追及(会社423←847)


☆差止め請求権

~1号: 法令定款違反

→第三者割当増資における有利発行に際して株主総会特別決議(201-1/199-2)を欠く場合

→いわゆる有利発行(199-3)。ここでの「特に有利な金額」とは、公正な発行価額よりも特に低い金額をいうところ、上場し市場価値のある株式の場合、新株の公正な発行価額は、旧株主の利益を保護するため、市場価格と等しくあるべきであるが、一方で資本調達の目的を遂げるため、時価より安い価格での発行の要請がある。よって、公正な発行価額は(判例:発行価額決定前の当該会社の株式価格、上記株価の騰落習性、売買出来高の実績、会社の資産状態、収益状態、配当状況、発行済株式数、新たに発行される株式数、株式市況の動向、これらから予測される新株の消化可能性等の諸事情)を総合して判断する。

その一つの判断基準として、法令ではないが、広く一般に受け入れられているルールとして日本証券業協会の自主ルールが存在し、それによると増資にかかる取締役会決議の直前日の価格の9割以上の価格、あるいは決議の日から6ヶ月以内の適当な期間を遡った平均価額の9割とする、というものがある。絶対的な基準や、当然の基準として用いてはならないが、判断基準を書いた後に「旧株主と会社の資本調達の実現との調和の観点から、一応の合理性がある基準である」として触れて判断の一助とすると良いと思う。

なお、非上場会社については「新株発行当時、客観的資料に基づく一応合理的な算出方法(DCFでも、配当還元でも何でも)を用いて判断していればよく、裁判所が別の方法で算出して判断することは取締役の予測可能性を害するため、相当でない」

→有利発行かつ株主総会特別決議なし(実質なしになる、引受人参加や虚偽説明199-3、そもそも不開催)の場合、引受人は公正な発行価額との差額を支払う義務を負う(212-1-1←847)

→会社には現実の資金が払い込まれるものの、差額を損害と認定して取締役も423(また、株代訴847)による損害賠償責任を負う(大阪高判平成11年6月17日判時1717号144頁、東京地判平成12年7月27日判タ1056号246頁)。間接損害と捉えて429や709の追求可能性もあるところだが、東京高判平成17年1月18日は不可能と断じている。理由は(*1)

~2号: 不公正発行 

目的が不公正である場合。一方で、新株発行の目的が資金調達のみではないことは多く、それ以外の目的があることで直ちに不公正とはいえないものの、会社経営者が新株発行を奇貨として株主構成を自己に有利に操作することも許されないことから、「主要目的ルール」が存在する。

主要目的ルール:

①会社の支配権争いが現に生じている場合に、

②会社の現経営陣が自己の地位を保全することを主要な目的として、

③特定の株主の持株比率を低下させるためになされる募集株式の発行を不公正な発行である

→判例:東京高決平成16年8月4日(ベルシステム24)

本件事業計画のために本件新株発行による資金調達の必要性があり、本件事業計画にも合理性が認められる本件においては、仮に、本件新株発行に際し相手方代表者をはじめとする相手方の現経営陣の一部において、抗告人の持株比率を低下させて、もって自らの支配権を維持する意図を有していたとしても、また、前記イ記載の各事実を考慮しても、支配権の維持が本件新株発行の唯一の動機であったとは認め難い上、その意図するところが会社の発展や業績の向上という正当な意図に優越するものであったとまでも認めることは難しく、結局、本件新株発行が商法280条ノ10所定の「著シク不公正ナル方法」による株式発行に当たるものということはできない

地裁決定:東京地決平成20年6月23日金判1296号10頁(クオンツ)

他にこれを合理化できる特段の事情がない限り、本件新株発行は、既存の株主の持株比率を低下させ現経営者の支配権を維持することを主要な目的としてされたものであると推認できるというべきである。…債務者において資金調達の一般的な必要性があったことは否定できないものの、これを合理化できる特段の事情の存在までは認められず、本件新株発行は、既存の株主の持株比率を低下させ現経営者の支配権を維持することを主要な目的としてされたものであると認めるのが相当

公募増資の場合: 平成29年7月19日東京高決

①公募増資は新株の割当先を引受証券会社により決定するから、取締役の意思とは無関係に決まる上、割当先は取締役の意思に従って議決権を行使する保証がないこと

②当然、取締役の意思に反対する株主や第三者も応募することができ、割当を受ける可能性があること

③割当後に市場に流通し、取締役の意思に反する株主が取得する可能性もあること

から、第三者割当増資の場合に比して、取締役に反対する株主らの支配権を減弱させる確実性が弱い。


☆新株発行無効の訴え(会社828-1-2)

まず、出訴期限に注意する。法律関係の早期安定の確保から、効力発生より6ヶ月(非公開:1年)となっている。また、839から将来効、838対世効(→類似必要的共同訴訟)となる。

なお、差止め請求権との関係について、二者は請求の基礎に同一性があるため、差止請求訴訟後、仮処分命令に違反してなされた新株発行について無効の訴えに切り替えた場合、出訴期限を徒過していても、差止請求の時点で訴えを提起したものとみなすことができる。(名古屋地判平成28年9月30日判時2329号77頁)

次に、法は無効原因を特定していないところ、無効原因は判例によって形成されてきたが、取引安全の観点から、制限的に解する必要がある。

以下、列挙。

>無効<

授権枠超過

株主に対する202-4の通知を欠く

非公開会社において株総特別決議を欠く新株発行(非公開会社については、その性質上、会社の支配権に関わる持株比率の維持に係る既存株主の利益の保護を重視し、その意思に反する株式の発行は株式発行無効の訴えにより救済するというのが会社法の趣旨と解される)

差止仮処分命令に違反した

公開会社において201-3/-4、募集事項の通知公告を欠く

>有効<

取締役会決議を欠く

公開会社において株主総会特別決議を欠く有利発行

不公正発行


☆新株発行不存在確認の訴え(会社829-x-1)

出訴期限なし(期限のある新株発行無効と異なり、不存在を前提とした訴訟を起こすことが可能である以上、出訴期限の制限には実質的に意味がない。新株発行無効は前述の通り取引安全の観点から期限がある)。遡求効(839/834-x-13)

~新株発行無効は「新株発行されたが、瑕疵がある」場合。新株発行不存在は「新株発行の外観があるが、実体が存在しない」場合である。当然後者の方が圧倒的に重大な問題を抱えている。具体的には、不存在は ・新株発行手続が全くされない中、登記のみなされた場合 ・代表権のない者が株券を独断で発行した場合 などの特別な場合に限られる。


*1

〔1〕会社が損害を回復すれば株主の損害も回復するという関係にあること、〔2〕仮に株主代表訴訟のほかに個々の株主に対する直接の損害賠償請求ができるとすると、取締役は、会社及び株主に対し、二重の責任を負うことになりかねず、これを避けるため、取締役が株主に対し直接その損害を賠償することにより会社に対する責任が免責されるとすると、取締役が会社に対して負う法令違反等の責任を免れるためには総株主の同意を要すると定めている商法266条5項と矛盾し、資本維持の原則にも反する上、〔3〕会社債権者に劣後すべき株主が債権者に先んじて会社財産を取得する結果を招くことになるほか、〔4〕株主相互間でも不平等を生ずることになることである。」 「もっとも、株式が公開されていない閉鎖会社においては、・・・違法行為をした取締役と支配株主が同一ないし一体であるような場合には、実質上株主代表訴訟の遂行や勝訴判決の履行が困難であるなどその救済が期待できない場合も想定し得るから

2022年4月14日木曜日

役に立たなかった幇助犯(宝石商殺害事件)

甲は、乙がVから預かっていた宝石の返還を免れるためVを殺害した強盗殺人罪の幇助犯として起訴された。甲の行為は、①乙が殺害場所と予定していた場所を目張りした ②計画が変更され、乙の運転する車中で殺害する際、後ろから車で追走した ことである。

①について、実際には殺害場所とならなかったばかりか、現実には乙が甲に依頼したわけでもなく、なんなら甲が目張りをしたこと自体乙は知らなかったようである。

(こういう場合に、)幇助者(幇助犯でないという結論に至った場合、幇助者ではないが区別のためこの名称とする)の行為が、正犯者を幇助したと言い得るには、直接正犯者の役に立つことでなくとも、「精神的に力づけ、犯罪の意図を維持ないし強化することに役立った」ことで足りる。


本件では、乙は甲が殺害予定地に目張りをしたものの、計画が変更され、実際にその場所では殺害しなかった。よって、乙は甲の①行為から直接の助力を受けていない。

また、実際には利用しなかったとしても、乙が甲の①行為によって精神的に助力を受けたといえるかについて、乙は甲が目張りをしてくれていたことを一切知らず、そうであれば①行為から何かしらの精神的後押しを受けることはありえない。よって、甲①行為には乙の強盗殺人罪の幇助犯は成立しない。

<× 原審では幇助犯を肯定した。

甲の行為は乙の一連の計画に基づく被害者の生命等の侵害を現実化する危険性を高めたものと評価できるのであって、幇助犯の成立に必要な因果関係に欠けるところはない


②について、どう実際に役立ったかは不明だが、事実関係から明らかにできる範囲で取れそうなら書いていいし、不安であれば「~~という面で直接乙の犯罪成立に役立ったとみることができる。また、仮に直接犯罪の成立に役立ったといえないとしても、<精神的に役立ったことを示す(甲が追走していることを乙が知っている、何かあった際は甲が手助けしてくれるだろうという期待、などを挙げて)>

として、こちらは幇助犯を成立させればよい。















教唆犯の因果範囲(ゴツトン師事件)

甲が乙、丙に「Aに押し入って強盗するよう」教唆し、乙・丙はA方へ赴くも侵入できず断念。しかし乙は丙に「Bへ押し入って強盗して帰ろう」と勧誘し、乙・丙はB方で強盗を遂げたという事例(いわゆるゴットン師事件を簡略化したもの。この事件くらいでしか見ない「ゴットン師」なる名前だが、パチ台に「仕事」をする人たちを「仕事師」が訛って「ゴト師」というのは現在も聞く言い方なので、「強盗師」とか「仕事師」くらいの意味なんでしょうね。絵師みたいな言い方するじゃん。)。

① 故意

このとき、甲が教唆犯として負う責任はA方に対する強盗未遂についてなのか、それともB方への強盗既遂まで負うのか、というのが今回の問題である。まずはお題目として

「甲の故意範囲について、必ずしも本人が認識した範囲と現に発生した事実とが具体的に符合する必要まではなく、構成要件的に重なり合う範囲で符合することで足りることから」

あてはめ

「甲が教唆した犯罪はA方に対する強盗であり、現実に起きたものはB方に対する強盗である。これは、客体がAからBに変わっているものの、それ以外の構成要件は同一であることから、Aに対する強盗を教唆する故意で、Bに対する強盗を教唆する故意があると認めることはできる」

として、故意は客体の錯誤・法定的符合説で認定します。

② 因果関係

乙丙はA方で断念後、「犯意を継続し」という表現はされているものの、一旦完全に反抗を断念している。そして、乙が丙を改めて強く誘い、丙がそれに動かされて決意を新たにしてB方への強盗を結構したものである。

このことから、甲の教唆によってA方へ向かった乙丙が誤ってB方へ侵入したとか、A方で成功後B方へ連続して行ったとかいう場合とは異なり、一旦断念した段階で因果関係は切れ、乙の勧誘によって改めて乙丙間に共謀が成立し、甲についてはもはや関係がないものと言える。

2022年4月5日火曜日

刑法短答:メモ直前用【随時更新】

・因果関係

甲が致死量の毒薬をVに飲ませる→事情を知らない乙がV死亡前に刺殺(即死)→甲が毒を盛った行為とV死亡の間には因果関係が「断絶される」

米兵ひき逃げ事件(甲が通行人を車で跳ね上げ、同乗者乙が屋根から突き落として転落、Vは衝突か転落か、どちらが原因か不明なくも膜下出血で死亡した)では、甲の衝突とV死亡には因果関係が「ない」

甲がVの求めに応じて覚醒剤をVに注射。甲は錯乱したVを放置して帰宅したところ、Vは覚醒剤中毒で死亡した。この場合に因果関係を肯定する要件:甲帰宅前に適切な治療を受けさせていれば「救命が合理的な疑いを超える程度に確実」←具体的には「十中八九救命可能」であること

被害者逃走事例:逃走して危険な場所に飛び込んだ結果死亡した場合、その逃走の原因となった暴行、恐怖感等から逃走の方法として「著しく不自然、不相当であった」といえる場合のみ因果関係を断絶する。(cf.高速道路侵入事件:長時間、執拗な暴行を受け、被告人らに対し極度の恐怖感を抱き、必死に逃走を図る過程でとっさにその……選択をした……→因果関係肯定)

熊撃ち事件:甲はVを熊と誤認して猟銃を発射、命中させ、放置すれば死に至る重症を負わせる。その後人間だと気づき、あえてもう一発命中させ死期を早めようと考え、銃殺した。→2発目の発射行為とV死亡の間に因果関係が「ある」。なお、第一発射には第二発射を殺人罪と取る前提で、業務上過失致傷罪を成立させる。

・不作為犯

不真正不作為犯の因果関係肯定には、期待された作為をしていれば結果が発生しなかったことが「合理的疑いを超える程度に確実」であったことが必要(因果関係\覚醒剤事件)

不作為の放火罪成立には「既発の火力による焼損を認容する意思」(×既発の火力を「利用する」意思)があれば足りる(炭火引火事件)

財産犯の不真正不作為犯はありまぁす(誤振込に気づいたものの、申告せず払い戻した行為について、不作為詐欺罪が成立する)

死体遺棄罪の不真正不作為犯もありまぁす(葬祭をする責務を負うものが死体を放置して立ち去る行為)

盗品等有償譲受罪は、盗品等である「かも知れない」と思いながら買うことで未必の故意を認定する。この認定は譲受時点で判断するため、後から盗品ではないと確信しても関係ない。

・被害者の同意

被害者の承諾がない状態で、承諾があると誤認して殺害した甲には、199が成立するものの、同意殺人罪の故意しかない。この場合、抽象的事実の錯誤となり、両罪の構成要件が実質的に重なり合う限度で軽い罪が成立する。両罪とも保護法益は人の生命身体である、侵害も生命に対する侵害という点で一致しているため、軽い同意殺人罪の限度で成立する。

追死の意思がないにもかかわらず、欺罔して追死すると誤信させ、Vを自殺させた場合、Vの同意は真意に沿わない重大な瑕疵があり無効であるため、同意のない殺人罪、すなわち199となる

特別公務員暴行陵虐罪の保護法益は公務の適正という国家法益であるため、被害者(というのが適切かわからないが、暴行の相手方)の承諾の有無に関わらず成立する。

・正当防衛

正当防衛に対する正当防衛は成立しない(急迫「不正」の侵害にあたらないため)

正当防衛として許される限度は、自己又は他人の権利を防衛する手段として必要最小限度のものである。すなわち、たまたま侵害行為の程度を反撃が超えたとしても、直ちに正当防衛を否定するものではない。

・責任能力、責任故意

心神耗弱/喪失→必要的減免(39-2)

心神喪失→精神の障害により+(事物の是非善悪を弁識する能力がない OR その弁識に従って行動する能力がない)

2022年3月29日火曜日

職業選択の自由と営業の自由

 ・職業選択の自由

憲法22条は,職業選択の自由を保障している。

一般に,職業は生計を維持する手段であるという側面を有する一方,これを通じて各人が個性を発揮し,自己実現を図るという性質も有している。すなわち,憲法が職業選択の自由を保障する趣旨は,個人の生計維持と,職業を通じた自己実現を保障することである。

このように,職業選択の自由には個人の生計維持という経済的自由権の側面と,自己実現の価値という精神的自由権の側面がある。そして,精神的自由の側面がある以上,職業選択の自由の規制は安易に正当化されるべきでなく,その規制は Ⅰ.規制目的が重要であり Ⅱ.目的達成のために必要最小限度の規制である場合に限られるべきである。 

(この規制が許されるのは医師や弁護士等の国家資格系の場合が多いです。あとは医療とスレスレのラインである彫師とかで見ることがあります(彫師の医療行為性や規制を合憲違憲どっちに転ばせるかはお好みだと思います))

・営業の自由

憲法22条は,職業選択の自由を保障している。

一般に,職業は生計を維持する手段であるという側面を有する一方,これを通じて各人が個性を発揮し,自己実現を図るという性質も有している。すなわち,憲法が職業選択の自由を保障する趣旨は,個人の生計維持と,職業を通じた自己実現を保障することである。

また,職業選択の自由の実質を担保するため,選択した職業を遂行する自由をも保障する必要がある(営業の自由を保障しなければ,実質的に職業選択の自由を保障した趣旨を没却する)。よって,憲法22条1項は,職業選択の自由のいち内容として,職業遂行の自由,すなわち営業の自由をも保障していると解すべきである。

もっとも,営業の自由が憲法上保障されるとしても,公共の福祉の観点から一定の範囲で制約を受ける。ところで,前述の通り職業には生計維持の手段,すなわち経済的自由権の側面のみならず,自己実現の手段という精神的自由権の側面がある。

しかし,職業を遂行する自由たる営業の自由は,職業に就く自由を制限する場合とは異なり,特定の状況下での営業を制限するに過ぎないから,人格的利益と密接に関連するとまではいえない。よって,営業の自由は,経済的自由権と解すべきである。

そうであれば,経済的自由権たる営業の自由に対する規制が

① (国民の生命及び健康を保護するといった,警察的措置たる)消極目的である場合には,比例原則の観点から,Ⅰ. 規制が必要かつ合理的であり,Ⅱ.より緩やかな手段で同じ目的が達せない場合にのみ,規制が正当化される。 〜薬事法判決(厳格な合理性の基準)

② (社会的弱者の救済や格差是正といった)積極目的である場合には,その目的から,原則として専門的知見に基づき立法府の裁量のもと規制が行われることが望ましく,規制が明白に不合理でない限り,正当化される。 〜小売市場判決(明白性の基準)