2022年4月14日木曜日

役に立たなかった幇助犯(宝石商殺害事件)

甲は、乙がVから預かっていた宝石の返還を免れるためVを殺害した強盗殺人罪の幇助犯として起訴された。甲の行為は、①乙が殺害場所と予定していた場所を目張りした ②計画が変更され、乙の運転する車中で殺害する際、後ろから車で追走した ことである。

①について、実際には殺害場所とならなかったばかりか、現実には乙が甲に依頼したわけでもなく、なんなら甲が目張りをしたこと自体乙は知らなかったようである。

(こういう場合に、)幇助者(幇助犯でないという結論に至った場合、幇助者ではないが区別のためこの名称とする)の行為が、正犯者を幇助したと言い得るには、直接正犯者の役に立つことでなくとも、「精神的に力づけ、犯罪の意図を維持ないし強化することに役立った」ことで足りる。


本件では、乙は甲が殺害予定地に目張りをしたものの、計画が変更され、実際にその場所では殺害しなかった。よって、乙は甲の①行為から直接の助力を受けていない。

また、実際には利用しなかったとしても、乙が甲の①行為によって精神的に助力を受けたといえるかについて、乙は甲が目張りをしてくれていたことを一切知らず、そうであれば①行為から何かしらの精神的後押しを受けることはありえない。よって、甲①行為には乙の強盗殺人罪の幇助犯は成立しない。

<× 原審では幇助犯を肯定した。

甲の行為は乙の一連の計画に基づく被害者の生命等の侵害を現実化する危険性を高めたものと評価できるのであって、幇助犯の成立に必要な因果関係に欠けるところはない


②について、どう実際に役立ったかは不明だが、事実関係から明らかにできる範囲で取れそうなら書いていいし、不安であれば「~~という面で直接乙の犯罪成立に役立ったとみることができる。また、仮に直接犯罪の成立に役立ったといえないとしても、<精神的に役立ったことを示す(甲が追走していることを乙が知っている、何かあった際は甲が手助けしてくれるだろうという期待、などを挙げて)>

として、こちらは幇助犯を成立させればよい。















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