2022年4月23日土曜日

【時事ネタ】サミットの天ぷら転倒事件

 2022年4月22日(までに)、「サミット天ぷら転倒事件」の上告が棄却されることが確定しました。

ニュースソース

時事通信社:天ぷら踏み転倒、客敗訴確定=スーパーのサミット―最高裁


怪我の程度も右膝の損傷で、既に店側からお詫びとして6万円を受け取っているとのことですが、その上で最高裁まで上がること自体、そして相手方がサミットという大きなスーパーだったという点に注目が集まる事件だったと言えるでしょう。

ともあれ、本件を法律的に整理してみます。本件は、民法709条に基づく損害賠償請求事件です。709条に基づく損害賠償を認めるには、①故意または過失 ②法益侵害 ③因果関係 が必要となるところ、上告人は怪我が生じており、身体に対する法益侵害があります。また、因果関係についても、サミットが床に天ぷらを放置した行為によって直接に生じたものであるから、認められます。問題となるのは①過失(もちろん故意ではないでしょう)の認定です。

過失を更に分解すると、前提として発生の可能性を認識できたかという「予見可能性」が要求され、その上で損害が発生することの予期(予見義務)と、それを怠ったこと(結果回避義務)で認定することになります。

本件では、これを一審で認め、「従業員が安全確認を徹底し、床に物が落ちたままにしないようにする義務を負っていた」としました。店内に危険なものが落下している可能性はあって、それは通常起こりうることなのだから、床を常時清掃しておくべきだったのに、それを怠ったと判断したのです。

一方、高裁では「レジ前で転倒事故が起きることを想定して、従業員を巡回させるなどの措置を取る義務があったとは認められない」として否定しました。確かに一審の言うことももっともですが、床に天ぷらが落ちていて、それを客が踏んで転倒することまで考えて頻繁に見回りをさせることまでは求められないという判断です。

なお、予見可能性については確かにスーパーの売り場床に落ちている天ぷらを発見することが不可能だったとはいえないでしょうから、前提はクリアしています。



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