全体注:枝番に意味はなく、単に番号を振った後に論点を追加したものである。
1. 警職法2-1(停止させて)
職務質問の効果を挙げるために必要な程度の有形力の行使は許される。もっとも、強制捜査にあたる行為、すなわち「法律によらなければ許されないような強制手段」は用いることができず、職務質問の目的、必要性、緊急性から具体的状況の下で相当と認められる限度で許容される。
e.g. 酒気帯び運転の疑いがある者に対して職務質問中、逃げようとしたところを運転席の窓から手を差し入れ、キーを回して抜き取った行為→警職法2-1にいう職務質問を行うため停止させる方法として必要かつ相当であり、交通の危険の発生防止に対しても緊急で行われるべきであるから適法
e.g. 覚醒剤使用の嫌疑を抱き、エンジンキーを取り上げる等して道路上に6時間留めおいた(その後令状に基づき強制採尿を行い……と続く)行為。→職務質問開始時に既に覚醒剤使用の嫌疑(異常な言動がみられている)があったほか、自動車を発進させて移動しようとした者に対して、エンジンキーを取り上げた行為は、その程度として車での移動を阻止したに過ぎず、さほど強い有形力の行使とはいえないから、職務質問を行うため「必要かつ相当」なものであり、交通の危険の発生防止に対し必要な応急の措置である。なお、6時間留めおいた行為については、覚醒剤使用の嫌疑が濃厚になっていたとしても、任意同行を求める手段として限度を超えており、移動の自由を著しく侵害していることから、任意捜査として許容される範囲を逸脱し、違法というべき<注:ここでは「任意捜査」であり、「任意捜査の限界を超えて違法」というロジック。強制捜査(実質的逮捕)だとするなら比例原則の話をした時点でアウト>である。しかし、前述のように適法な職務質問によって留めおかれ、その時間において長すぎたとしても、覚醒剤により異常な言動をしている者が自動車で離脱しようとしているという状況において、結果的に長時間に及ぶ説得となったことは致し方ないというべきであり、長時間の留めおきに至り違法ではあるが、令状主義の精神を没却するほど重大とまではいえない。
e.g. ラブホに一人で泊まっていた者が、ホテル側の声掛けに対し異常な言動を繰り返したことから何らかの薬物の使用の嫌疑を抱き、警察官らが戸を叩き声をかけたが反応がなかったため、鍵のかかっていないドアを開けたところ、ドアを閉めようとしたため警察官らが足を差し入れ閉扉を阻止、殴りかかってきた者の右腕を掴み、ソファーに体を押さえつけた行為①。その後、取り押さえを継続したまま、任意で覚醒剤を確認するため財布の提出を求めたが、承諾しなかったため、承諾を得ないまま開き、白色結晶を確認した行為②。→① 警職法2-1に基づく職務質問に際して、同意なくホテル客室に立ち入ることは許されるか。本件では既にCOの時間を過ぎており、ホテルや警察官の声掛けにも反応しないか、異常な言動で対応していたことから、通常の宿泊客とはいえない状況になっていたことから、無銭宿泊、及び覚醒剤使用についての職務質問の効果をあげるには居室に立入り、直接対面して会話することが必要な状況であり、居室に立入り、ドアに足を差し入れることについては必要かつ相当な行為であるといえる。次に、殴りかかってきた者に対してとっさに右腕を掴み、ソファーに押し倒した行為については、有形力の行使の程度こそ強いが、突然の暴行を契機とするもので、緊急性があり、職務質問を継続するには必要かつ相当であるといえるから、適法である。→②原則として、職務質問に付随する所持品検査は任意で行われる必要があり、同意が求められる。一方で、捜査に至らない、強制にわたらない限り、承諾がなくても検査の必要性、緊急性、及び保護される公共の利益→犯罪の重大性、危険性に対して、被侵害利益との権衡のもと、具体的状況の下で相当と認められる限度で許される。本件についてみると、対象者はホテルや警察官の問いかけに対し異常な言動を返しており、覚醒剤使用の前歴を確認しているといった状況があるから、嫌疑の程度は相当に高まっていた。よって、所持品検査を行えば覚醒剤が発見される可能性は高く、持ち物を確認することの必要性は高い。また、覚醒剤は処分が容易であるから、今確認しなければ散逸する危険性が高いため、緊急性も高い。対して、被侵害利益は財布を確認されるに過ぎないことから、その程度は軽いものである。よって、総合的に考えて、本件所持品検査(行為②)は適法である。
→この判例(最決H15/05/26)の亜種を作るとすれば、ドアに鍵がかかっていたならより立入りを丁寧に論じる必要があるが、結論は適法であと思われる。また、無抵抗、反抗的言動程度の被告人に対して2人かかりで押さえつけたりしていれば、緊急性がかなり減り、相当性も減るので単体では違法となる可能性は高い。少なくとも継続しているなら違法(本件ですら許容限度を超えているが、暴れそうだったので「令状主義潜脱の目的はない」、と違法とも適法とも言わないギリギリの判断となっている)
2. 承諾なき所持品検査
(論証)
警職法2-1で明文規定がないところ、口頭における職務質問に付随して、その効果を挙げるために任意で行われる限り、許されると解すべきである。原則として、職務質問に付随する所持品検査は任意で行われる必要があり、同意が求められる。一方で、捜査に至らない、強制にわたらない限り、承諾がなくても検査の必要性、緊急性、及び保護される公共の利益→犯罪の重大性、危険性に対して、被侵害利益との権衡のもと、具体的状況の下で相当と認められる限度で許される。
<鍵をこじ開けたパターン>
法益侵害の程度が大きいため、これを違法として、一方で既に緊急逮捕の要件が整っており、続けて逮捕が行われているから逮捕の現場における捜査として同一視しうるので適法、という書き方が米子強盗(アタッシェケース破壊事件)との関係で適切と思われる。
3.
一斉検問
警「察」法2条1項の交通の取締として適法とする。所掌事務の範囲で行っているよ、という程度の根拠。
4.
強制の処分(197-1但)
個人の意思を制圧し、身体住居財産等重要な権利利益に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別な根拠規定がなければ許容することが相当でないもの。
・宅配業者が輸送中の荷物に対するX線検査→プライバシーを大きく侵害するもので、検証としての性質を有するものであるから強制処分
5. GPSロガー(被疑者に対して)
GPS捜査は、公道上のみならずどこにいてもその行動を逐一把握することを可能とし、個人の行動を網羅的、継続的に把握するものであるから、個人のプライバシーを著しく侵害するものである。憲法35条は住居……について侵入を受けることのない権利を保障しているところ、個人のプライバシー領域を含む行動全てを把握することは憲法の保障する重要な権利利益を侵害するもので、個人の意思としても、少なくとも知っていれば喜んで提供するとは考えられない内容であるから、黙示に制圧されていたといえる。よって、強制処分にあたる。
6.
任意捜査の限界
強制処分にあたらない場合であり、任意捜査であるといっても、無限定に許容されるものではなく、捜査の必要性、緊急性から具体的状況のもとで相当と認められる限度で許容される(比例原則。必ず強制処分にあたらないか検討後使用し、比例原則を出す以上絶対に任意処分なんですよね(進次郎))
考慮要素は有形力の行使の程度、権利法益の種類、侵害程度、被疑事実の重大性、嫌疑の程度、から導かれる捜査の必要性、緊急性。最後は総合考慮。
7.
承諾を得た強制捜査
承諾を得れば、無令状で「強制処分」に該当する行為を行ってよいか?という問題。法益をあえて、理解した上で権利放棄したといえる場合ならば、特に許される。但し、放棄できない権利利益もあり、家宅捜索の承諾、女子身体検査の同意は通常承諾がありえないから無効らしい(アガルート)。
8.
実質的逮捕
警察による適法な任意同行後、取調べが開始されて数回の休憩を挟みながら断続的に取調べは継続し、午前8時ごろから翌午前0時過ぎまで常に監視されつつ行われた。その際、食事や用便の際も常に監視が継続していたものである。この事案について、富山地決S54/07/26は勾留請求時の審査で逮捕手続きに重大な違法があるとして請求を棄却した。
任意捜査として、任意同行を求めてそれに応じた被疑者を一定時間拘束すること自体は任意捜査として適法に行われる(197-1本/198-1)。一方で、任意捜査として本人が表面上同意して行われていたとしても、任意捜査として行われる限界を超え、実体が法令、具体的には逮捕令状の発付を受けなければ許されない強制処分たる実質的逮捕として違法となる場合がある。(その後の勾留を先行逮捕重大違法で却下するかは裁判所によってわかれており、本決定以外では多くが軽微な違法としている)
任意同行後の拘束について、①同行を求めた時間、場所、②同行の方法、態様、③同行の必要性、④被疑者の属性、⑤被疑者の対応、⑥捜査官の意図、⑦逮捕状準備の有無、そして特に⑧同行後の取調べ時間・場所・方法から総合的に判断して、逮捕と同視すべき制約が加えられているか検討する。
……
この先、判例が認めている議論として実質的逮捕ではないが、任意捜査として許される限界を超えた、「事案の性質、被疑者に対する容疑の程度、被疑者の態度等諸般の事情を勘案して、社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度において、許容」されるか否かというものがある(いわゆる高輪グリーンマンション事件)。また、午後11時過ぎから夜を徹して翌日午前9時に自供し、その後食事休憩等取りながらも22時間にわたって断続的に取調べが行われた(いわゆる平塚ウエイトレス殺人事件)場面でも、同様に任意捜査として許されるかの判断を行っている。
特に平塚ウエイトレス殺人事件では富山地決の事件と時間や取調べ態様は大きく異ならないようにもみえるため、その区別が問題となるが、平塚は被疑者があえて積極的に聴取を受け真相を解明することを望んだこと、参考人としての聴取の中で供述が変遷し、ついには疑いを生じ被疑者となり、その自白内容についてもなお整合性がとれず疑いが生じたため、長時間に及んでしまったことから、捜査官としては令状主義の潜脱を意図したものではなかったこと等を理由として任意捜査の限界の中で適法とした。この判断基準は上記「実質的逮捕」の基準とどう異なるのか不明であるが、仮に同じような議論になってしまうとしても「区別して書く」ことが答案戦略上は求められる。
9.
おとり捜査
いわゆるおとり捜査やコントロールド・デリバリーの適法性。任意捜査の適法性の枠組み(比例原則、197-1)で考えるのが判例。公益+必要性vs被侵害利益+強度+犯罪が(ほっといても)行われる程度
結果として違法なおとり捜査とした場合証拠排除にとどまるのか、控訴棄却、免訴までいくのかは争い。
10.
逮捕の理由と必要性
逮捕は199-1、現行犯の場合憲33/刑訴212/213、緊急逮捕の場合210で規律される強制処分である。
要件は①逮捕の理由(199-1本、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由)、②逮捕の必要性(199-2但、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは却下されることの帰結)であり、②は犯罪の軽重、逃亡のおそれを具体的事実から判断する。
ついでに確認しておくと、警察による逮捕の場合203-1から48時間以内に検察官送致し、検察官が受け取ってから205-1から24時間以内に勾留に移らなければならない。その合計は205-2から72時間。対して、検察官が逮捕した場合は勾留請求まで48時間(204-1)に短縮されることに注意する。
10-a. 現行犯逮捕
現行犯逮捕は、犯人であることが明白であって、誤認逮捕のおそれが低く、かつ即時に犯人の確保、制圧の必要性が高いことから令状主義の例外として許される。よって、要件は①逮捕の必要性があり、②犯罪の現行性あるいは時間的接着性があること、③場所的接着性など、犯罪が行われたことと犯人性が「逮捕者自身にとって」明白であることが要件となる。
11. 勾留の要件、逮捕前置主義
勾留の要件は①勾留の理由、②勾留の必要性、③逮捕前置、④勾留質問である。
①勾留の理由は逮捕の理由における嫌疑より高度のものが要求される。また、207-x-1~3のいずれか(住所不定、罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれ)に該当することが必須である。
②勾留の必要性は起訴可能性、捜査の進展、被疑者の年齢や身体の状況から判断する。
12.
事件単位の原則
A罪で逮捕した被疑者を、後に発覚したB罪で勾留できるか。原則として事件単位で行われるべきであり、それは逮捕前置主義の意思の貫徹から導かれる。なお、被疑事実の同一性がある場合は実質的に連続した取調べが想定されるから、許される。
13.
勾留請求の別事件付加
A罪で逮捕して、A罪+B罪で勾留することは許されるか。事件単位の原則との関係で問題となる。あくまでA罪の逮捕が先行しており、A罪単体での勾留が可能なことを前提とし、A罪での勾留にB罪という理由も付記してあわせて取調べを行うことは、被疑者の拘束時間という点で有利であるから、許される。ただし、これはA罪の逮捕が先行しており、A罪での勾留が適法であるからこそ認められるものであるから、A罪での勾留に理由・必要性がなくなった時点で、B罪における勾留に理由があっても釈放されなければならない。
14.
違法逮捕から続く勾留請求
逮捕について準抗告を認めていない(429-1-2反対)ことから、勾留請求時点で逮捕の違法についても判断することを法は予定しているといえ、原則として却下すべきである。しかし、その違法が軽微な場合には形式的に違法な逮捕が先行していたとしても、勾留以下の手続きは進めることが許される。特に勾留請求を却下すべきとしている(207-5但、206-2)身柄拘束時間制限の超過と同視すべき程度の違法があれば、却下される。
15.
一罪一逮捕一勾留の原則
この場合の一罪は「実体法上一罪」を指す。なお、実体法上一罪であっても、逮捕勾留中に新たに発生した事案である場合や、新たに発覚した場合については改めてその件による逮捕、勾留が許される。これは、捜査機関が極力同時に処理することで被疑者の負担を軽減させることを目的とするところ、同時に処理することが不可能であった場合にまで要求することはできないことによる。
16.
再逮捕・再勾留禁止の例外
199-3、規142-1-8は再逮捕を前提とした規定であるから、法は当然に再逮捕があることを予定している。また、再逮捕が想定されている以上、再勾留の規定はないが、逮捕前置主義の観点から再逮捕のみ認められることは理論上あり得ない。
再逮捕が許されるのは、適法な逮捕勾留が先行する場合、新たな証拠や罪証隠滅のおそれが発生した場合など、再捜査、身柄拘束が必要となり、被疑者の利益と比較しても重大な事情があり、逮捕勾留の不当な蒸し返しと言えないものである。また、違法な先行逮捕勾留がある場合は、より厳格に判断し、例外的に認めるべきである。
17.
別件勾留後の本件逮捕
18.
余罪取調べ
19.
捜索差押え場所の特定性
20.
捜索差押え対象物の特定性
21.
捜索差押え執行中に届いた物
22.
令状提示のタイミング
23.
222-1/111「必要な処分」
24.
包括的差押え
25.
捜索差押えに付随する写真撮影
26.
身体に対する場所令状による捜索
27.
逮捕に伴う無令状捜索差押え
28.
強制採尿・採血・伴う移動
29.
嚥下物差押え
30.
写真撮影・ビデオ撮影
31.
接見指定(39-3捜査のため必要があるとき)
32.
一部起訴
33.
訴因の特定
34.
共謀の特定の程度
35.
訴因変更の可否
36.
訴因変更の要否
37.
縮小認定の可否
38.
悪性格の立証
39.
伝聞非伝聞の区別
40.
伝聞例外
41.
精神状態の供述
42.
321-1-2前の列挙事由の性格
43.
321-1-2前と特信情況
44.
321-1-2後と特信情況
45.
実況見分調書(証拠法)
46.
再現写真の指示説明部分
47.
再伝聞
48.
自白法則
49.
違法収集証拠排除法則
50.
違法性の承継(証拠法)
51.
私人収集の違法収集証拠
52.
択一的認定
53.
一事不再理
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