2022年3月21日月曜日

後見、保佐、補助の権限の違い(+α)

・後見

O 代理権 → 財産に関わる重要な行為を本人に代わって行うことができる

X 同意権 → 代理権がより上位の権限であるため、観念しない

O 取消権 → 被後見人が後見人の同意を得ないで行った法律行為を取り消すことができる(日用品の購入・その他日常生活に関する行為を除く)

後見開始の審判(7条): 請求権者 →「本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官」



・保佐

Δ 代理権 → 家庭裁判所が認めた権限につき、代理権をもつ(→ 家裁が何もしなければ代理権なし) ☆876条の3

O 同意権 → 民法13条1項(末尾に条文引用)財産に関わる重要な法律行為を被保佐人が行う際、同意を必要とする(同意を与えないときは、被保佐人の請求により裁判所が代わりに許可できる、13条2項)

Δ 取消権 → 同意権の範囲内の行為で、同意を得ずにした行為については取り消し可能(13条3項)

保佐開始の審判(11条) : 請求権者 → 「本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官」(後見の請求権者と一緒(当然後見↔保佐は入れ替わっているが))


・補助

Δ  代理権 →  家庭裁判所が認めた権限につき、代理権をもつ(→ 家裁が何もしなければ代理権なし) ☆876条の9

Δ 同意権 → 民法13条1項(末尾に条文引用)財産に関わる重要な法律行為 のうち一部を、「本人の同意を得て(本人の請求でも可、17条2項)」家庭裁判所の審判を経て同意が必要なものとすることができる(17条1項)

Δ 取消権 →同意権の範囲内の行為で、同意を得ずにした行為については取り消し可能(17条4項)

補助開始の審判(15条) : 請求権者 → 本人の請求 OR (本人の同意 AND 配偶者、四親等以内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官)

~代理権 OR 同意権の範囲を定める審判とともにしなければならない(15条3項)


・催告権(20条)

1項 行為能力者となった後、本人に対し1ヶ月以上の期間を定めて追認するか催告できる →確答しなければ「追認した」ものとみなす

2項 制限能力者である間に、法定代理人、保佐人、補助人に対し1項同様の催告ができる→確答しなければ「追認した」ものとみなす

3項 保佐、補助の場合、本人に対し、追認を得るべき旨の催告をすることができる → 追認がない場合は「取り消した」ものとみなす


・詐術(21条)

制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、取り消せない



・民法13条1項の行為

~原則として不動産関係、借金、損をする可能性のある行為が列挙されている。注意として「元本の領収」はパット見損にならない気もするが含まれる。不動産と借金はとにかくダメ、と覚えたい。

(保佐人の同意を要する行為等)
第十三条 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
 元本を領収し、又は利用すること。
 借財又は保証をすること。
 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
 訴訟行為をすること。
 贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法(平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
 第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。
 前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。

2022年3月12日土曜日

刑法各論 構成要件まとめ(随時更新)

おことわり:「若しくは」「又は」等は条文と異なる場合や、本稿内での表記ゆれがある可能性がありますが、その点は修正の予定がありません。また、「『殺し』た」等の表記をすべき場合にも「殺す」「殺した」等の表現をしており、条文引用として不正確な記述を含みます。この点も修正する気はありません。

採用している説が多数説や通説、判例とは限りません(原則判例>通説で採用していますが、答案上有利な説や、個人的に納得している説を採用している場合もあり)。網羅には基本刑法か条解でも読んでください。


・個人的法益に対する罪

ー生命に対する罪

199 殺人罪

保護法益:人の生命

①人を:自然人に限る、刑法では一部露出説を取る(民法と異なる)、胎児は含まない

②殺した:三徴候説(心肺停止、呼吸停止、瞳孔反射の喪失)


202前 自殺関与罪

①人を

②教唆しもしくは幇助して自殺させる

自殺関与罪の正当化、処罰根拠については深入りしない(自殺有罪説が説明しやすいと個人的には思うが)


202後 同意殺人罪

①人を

②その嘱託(=被殺者が殺害を依頼すること)を受けもしくはその承諾(=被殺者が殺害の申込みに同意すること)を得て殺す


212 (自己)堕胎罪

保護法益:胎児の生命+妊婦の生命身体

①妊娠中の女子が

②薬物を用い、またはその他の方法により

③堕胎(=胎児(=受精卵が母体に着床して以後、分娩期まで)を母体内で殺害、あるいは分娩期に先立って母体外へ排出すること(大判M44/Dec./08))した


213 同意堕胎罪/同意堕胎致死傷罪

①女子の嘱託(=女子が胎児の殺害や傷害を依頼すること)を受け、または承諾(=女子が胎児殺害や傷害の申込みに同意すること)を受け

②堕胎させた

(213 同意堕胎致死傷 ③よって女子を死傷させた):胎児の死亡は「堕胎」で表されるので、ここでの致死傷の客体は母体たる「女子」に限る


214 業務上堕胎罪/業務上堕胎致死傷罪

①医師、助産師、薬剤師または医薬品販売業者が

②女子の嘱託(=女子が胎児の殺害や傷害を依頼すること)を受け、または承諾(=女子が胎児殺害や傷害の申込みに同意すること)を受け

③堕胎させた

(214 同意堕胎致死傷 ④よって女子を死傷させた):胎児の死亡は「堕胎」で表されるので、ここでの致死傷の客体は母体たる「女子」に限る


215 不同意堕胎罪 / 216 不同意堕胎致死傷罪

①女子の嘱託(=女子が胎児の殺害や傷害を依頼すること)、または承諾(=女子が胎児殺害や傷害の申込みに同意すること)を「得ないで」

②堕胎させた

(216 ③よって女子を死傷させた)


217 (単純)遺棄罪 / 219 (単純)遺棄致死傷罪

保護法益:人の生命、身体(生命までは危害が及ばない場合を含むかは処罰範囲が広くなることから争いがあるが、傷害罪の後に置かれていること、法定刑が比較的軽いことから身体も含むとする説を採用する)

①老年、幼年、身体障害または疾病のために扶助を必要とする者を

②遺棄(=保護を要する者を保護のない状態に置くことにより、その生命身体を危険に晒す移置をいう:置き去りを含まない)した

(219 ③よって人を死傷させた)


218 保護責任者遺棄罪 / 219 保護責任者遺棄致死傷罪

①老年者、幼年者、身体障害者、または病者を(217/219と明確な差なし)

②保護する責任のある者(=要扶助者の生命身体に対する排他的支配を実質的根拠とし、親子でも法令上の親の監護義務(民820)から即認めることは避ける。救護の引受け等も排他的支配性から説明できる。ひき逃げ等の場合、一般道で普通に人が通るところならば「排他的支配性」が認められないため、救護義務違反にとどまって保護責任者遺棄は成立しない)

③遺棄(=保護を要する者を保護のない状態に置くことにより、その生命身体を危険に晒す移置に加え、置き去りも含む)し、またはその生存に必要な保護をしなかった(=場所的隔離をせずとも、生存に必要な保護をしないこと、間近にいて世話をしないこと)

    →遺棄について整理すると、218/219は「移置、置き去り、不保護」、217/219は「移置」である


ー身体に対する罪

208 暴行罪

保護法益:身体

①暴行(=人の身体に向けられた不法な有形力の行使、非接触の場合傷害の危険を有する行為(日本刀振り回し事例)、接触の場合傷害の危険は不要(:不快嫌悪の情を催させるに足りる行為(cf.塩まき事例)(福高判S46/Oct./11))を加え

②傷害するに至らなかった

~暴行罪に未遂がないことは注意、傷害罪の未遂としても機能することに注意


204 傷害罪 / 205 傷害致死罪

①人の身体を

②傷害(=生理機能傷害、頭髪事例を傷害罪とする完全性侵害説が有力反対説だが、判例上完全性を侵害するが、生理機能を傷害しないものは「暴行」)(=PTSD、長時間の意識障害も傷害結果として足りる)した

(205 ③よって人を死亡させた)

~暴行罪の結果的加重犯、未遂は暴行罪、暴行によらない傷害罪あり(詐称誘導による転落誘発、頻回の無言電話による鬱、奈良騒音事件(1つ1つは暴行とはいえない程度の騒音を出し続け、ついには睡眠障害に陥らせた)、性病の意図的な感染等)

~暴行によらない傷害罪の場合は「傷害の故意」が必要である(暴行罪にあたらないのだから、この場合だけは「暴行の結果的加重犯なので暴行の故意で足りる」が使えない


206 現場助勢罪(あんまりわかってない)

①傷害罪、傷害致死罪の犯罪が行われるにあたり

②現場において

③勢いを助けた


207 同時傷害特例

0 意思連絡なく(共犯との区別)

①2人以上で(=同時、あるいは時間的・場所的連続性ある場合)

②暴行を加えて

③人を傷害(=含:致死 除:殺人等傷害以外の罪)した場合

④それぞれの暴行による傷害の軽重を知ることができず、またはその傷害を生じさせた者を知ることができないとき

~同時犯だが共犯が取れないパターンでは検討必須。疑わしきは被告人の利益に→どちらが傷害結果を生じたか分からないときは2人とも暴行罪までとなってしまうため

~詳細は共犯周りの別ポストに譲る



2022年2月24日木曜日

タコ滑り台判決(知財高裁令和3年12月8日/東京地裁令和3年4月28日)

美術手帖を読んでいたら応用美術について見ておいたほうが良さそうな判決が出ていたので整理してみました。アーティスティックな遊具は割と見かけますが、考えてみれば応用美術としても、建築の著作物としても捉えられるいいテーマなのかも。この機会に考えておきましょ。


「本件は,原告が,被告に対し,原告が製作したタコの形状を模した……滑り台が美術の著作物又は建築の著作物に該当し,被告がタコの形状を模した公園の遊具である滑り台2基を製作した行為が,いずれも,原告が有する同目録記載の滑り台に係る著作権(複製権又は翻案権)を侵害すると主張して,主位的に,著作権侵害の不法行為に基づき,……支払を,予備的に,不当利得に基づき,……支払を,それぞれ求める事案である。(太字、下線、中略筆者。以下同様。)」(以下、高裁の判断セクションまでは地裁判決より引用)

原告の製作する「タコの滑り台」は「基本的に,上部にタコの頭部を模した部分を備えている,その中は空洞となっていて,当該部分の下部の踊り場から複数のタコの足が延びている,タコの足は,主にスライダー(滑り台のうち,利用者が滑り降りる部分をいう。)となっており,滑り台の利用者は,いずれかのスライダーを選んで滑り降りることができるといった構造を有している。なお,タコの足が階段をなしているものもある。」

<原告の主張>

この「タコの滑り台」は「抽象形態の中に,空洞部等の神秘的な空間を設け,さらに頭部を付加して,抽象性と具体性を内包した彫刻として,子どもたちに形の美しさ,不思議さ,楽しさ等を体感してもらうために創作されたものであって,Bが,彫刻家としての思想,感情を創作的に表現したものである。」(Bは原告の前身となる会社に勤務していた彫刻家)

その他、原告は「タコの滑り台」について大変熱く語っているが、その部分は判例を参照いただきたいが、とにかく滑り台であること以上に独創的な芸術品であると語っている。それを踏まえた上で、著作権法的に重要な部分は以下の通り。

①(美術の著作物)本件原告滑り台が応用美術に属するものであるとしても,一品製作品というべきものであり,「美術工芸品」(著作権法2条2項)に当たるから,「美術の著作物」(同法10条1項4号)に含まれる。

②(美術の著作物)本件原告滑り台が「美術工芸品」に当たらないとしても,「美術工芸品」以外の応用美術が「美術の著作物」に該当するか否かの判断基準として,「美的」という観点から高い創作性を必要とすると解するのは相当ではなく,個別具体的に,作成者の個性が発揮されているか否かを基準として判断するべきである。(本件滑り台においては、滑り台としての最低限の機能を果たす階段とスライダーがあれば足りるのであって、そのスライダーの形状がタコの足の形をしているとか、頭部にあたる空洞が存在するとか、必然的とはいえない部分が存在するので、独立して創造的な部分があるとする)

③(美術の著作物)純粋美術同視説をとるとしても、原告「タコの滑り台」は前述のように創作性の程度が非常に高いため、「純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価される」。

④(建築の著作物)「本件原告滑り台のような彫刻としての性質を有する遊具の著作物性については,客観的,外形的に見て,それが滑り台において通常加味される程度の美的創作性を上回り,滑り台としての実用性や機能性とは別に,独立して美的鑑賞の対象となり,彫刻家・設計者の思想又は感情といった文化的精神性を感得せしめるような造形芸術としての美術性を備えているか否かという基準により,判断すべき」

「本件原告滑り台は,滑り台の機能とは独立した形態的特徴を有しており,通常,滑り台に施される美的創作性と比べて,はるかに美的創作性の程度が高い。したがって,本件原告滑り台それ自体がモニュメント彫刻として美的鑑賞の対象となり,設計者の思想又は感情といった文化的精神性を感得せしめるような造形美術としての美術性を備えている」

 

<被告の主張>

(建築の著作物)「原告が主張する判断枠組みを前提にしても,前記ア(被告の主張)のとおり,本件原告滑り台の機能ないし特徴は,多人数が同時に遊べ,スライダーを複数有しており,頭部に隠れて遊ぶことができる空間があるといった点にあり,本件原告滑り台は,こうした遊具としての実用性や機能性とは別に,独立して美的鑑賞の対象となり得るとは考えられないし,設計者の思想又は感情といった文化的精神性を感得せしめるような造形芸術としての美術性を備えたものとはいえない」

 

<その他>

複製権侵害や翻案権侵害、著作権譲渡、職務著作といった論点でも争っているが、そもそも本件滑り台が著作物であるかがその大前提となっており、本判例において注目すべき点であるため、省略する。

 

<東京地裁の判断(東京地裁R3/Apr./28)

①(美術の著作物)「(遊具である滑り台として通常有する構造を備えている)本件原告滑り台は,利用者が滑り台として遊ぶなど,公園に設置され,遊具として用いられることを前提に製作されたものであると認められる。したがって,本件原告滑り台は,一般的な芸術作品等と同様の展示等を目的とするものではなく,遊具としての実用に供されることを目的とするもの……」

「実用に供され,あるいは産業上利用されることが予定されている美的創作物(いわゆる応用美術)が,著作権法2条1項1号の「美術」「の範囲に属するもの」として著作物性を有するかについて……応用美術と同様に実用に供されるという性質を有する印刷用書体に関し,それ自体が美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えることを要件の一つとして挙げた上で,同法2条1項1号の著作物に該当し得るとした最高裁判決(最高裁平成10年(受)第332号同12年9月7日第一小法廷判決・民集54巻7号2481頁)の判示に照らし,同条2項は,単なる例示規定と解すべき……同判決が,実用的機能の観点から見た美しさがあれば足りるとすると,文化の発展に寄与しようとする著作権法の目的に反することになる旨説示していることに照らせば,応用美術のうち,「美術工芸品」以外のものであっても,実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して,美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えている部分を把握できるものについては,「美術」「の範囲に属するもの」(同法2条1項1号)である「美術の著作物」(同法10条1項4号)として,保護され得ると解するのが相当」

「(美術工芸品であるとの原告主張に対して)本件原告滑り台は,自治体の発注に基づき,遊具として製作されたものであり,主として,遊具として利用者である子どもたちに遊びの場を提供するという目的を有する物品であって,「絵画,版画,彫刻」のように主として鑑賞を目的とするものであるとまでは認められない」

「(応用美術として保護されるとの原告主張に対して)実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して,美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えている部分を把握できるものであるか否かについて,……(タコの頭部について)本件原告滑り台の中でも最も高い箇所に設置されているのであるから,同部分に設置された上記各開口部は,滑り降りるためのスライダー等を同部分に接続するために不可欠な構造であって,滑り台としての実用目的に必要な構成そのものであるといえる。また,上記空洞は,同部分に上った利用者が,上記各開口部及びスライダーに移動するために不可欠な構造である上,開口部を除く周囲が囲まれた構造であることによって,最も高い箇所にある踊り場様の床から利用者が落下することを防止する機能を有するといえるし,それのみならず,周囲が囲まれているという構造を利用して,隠れん坊の要領で遊ぶことなどを可能にしているとも考えられる。そうすると,本件原告滑り台のうち,タコの頭部を模した部分は,総じて,滑り台の遊具としての利用と強く結びついているものというべきであるから,実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して,美的鑑賞の対象となり得る美的特性を備えている部分を把握できるものとは認められない。」

以下、足部分や全体の形状について分離して美術鑑賞の対象となりうる美的特性を備えているとまではいえないから、応用美術とは言えないことを細かく認定している。

なお、原告が言う、滑り台としての最低限の機能を超えた独創的な部分は必然的な表現ではない(から、滑り台の機能から独立して存在する美的特徴がある)という主張に対しては「ある製作物が「美術の著作物」たる応用美術に該当するか否かに当たって考慮すべき実用目的及び機能は,当該製作物が現に実用に供されている具体的な用途を前提として把握すべきであって,製作物の種類により形式的にその目的及び機能を把握するべきではない」

「また、原告の上記主張は……著作物性(著作権法2条1項1号)の要件のうち,「思想又は感情を創作的に表現したもの」との要件に係るものであって,「美術」「の範囲に属するもの」との要件に係るものではない」

②(建築の著作物)「著作権法においては……「建築」についての定義は置かれていない……(建築基準法等から解釈すると)土地に定着する工作物のうち,屋根及び柱若しくは壁を有するもの……本件原告滑り台も,屋根及び柱又は壁を有するものに類する構造のものと認めることができ,かつ,これが著作権法上の「建築」に含まれるとしても,文化の発展に寄与するという目的と齟齬するものではないといえる。そうすると,本件原告滑り台は同法上の「建築」に該当すると解することができる。」

「「建築」に該当するとしても,その「建築の著作物」(著作権法10条1項5号)としての著作物性については,「文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」(同法2条1項1号)か否か,すなわち,同法で保護され得る建築美術であるか否かを検討する必要がある。具体的には,「建築の著作物」が,実用に供されることが予定されている創作物であり,その中には美的な要素を有するものも存在するという点で,応用美術に類する……その著作物性の判断は……(①と同様の基準が相当)」

 

<控訴審の判断(知財高裁R3/Dec./8)>

①(美術の著作物)「応用美術には,一品製作の美術工芸品と量産される量産品が含まれるところ,著作権法は,同法にいう「美術の著作物」には,美術工芸品を含むものとする(同法2条2項)と定めているが,美術工芸品以外の応用美術については特段の規定は存在しない。上記同条1項1号の著作物の定義規定に鑑みれば,美的鑑賞の対象となり得るものであって,思想又は感情を創作的に表現したものであれば,美術の著作物に含まれると解するのが自然であるから,同条2項は,美術工芸品が美術の著作物として保護されることを例示した規定であると解される。他方で,応用美術のうち,美術工芸品以外の量産品について,美的鑑賞の対象となり得るというだけで一律に美術の著作物として保護されることになると,実用的な物品の機能を実現するために必要な形状等の構成についても著作権で保護されることになり,当該物品の形状等の利用を過度に制約し,将来の創作活動を阻害することになって,妥当でない。もっとも,このような物品の形状等であっても,視覚を通じて美感を起こさせるものについては,意匠として意匠法によって保護されることが否定されるものではない。これらを踏まえると,応用美術のうち,美術工芸品以外のものであっても,実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して,美的鑑賞の対象となり得る美的特性である創作的表現を備えている部分を把握できるものについては,当該部分を含む作品全体が美術の著作物として,保護され得ると解するのが相当」

「(タコの頭部について)本件原告滑り台のタコの頭部を模した部分のうち,上記天蓋部分については,滑り台としての実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して把握できるものであるといえる」(←地裁と異なる認定をしているが)「(天蓋部分は)頭頂部から後部に向かってやや傾いた略半球状であり,タコの頭部をも連想させるものではあるが,その形状自体は単純なものであり,タコの頭部の形状としても,ありふれたものである。したがって,上記天蓋部分は,美的特性である創作的表現を備えているものとは認められない」

2022年1月24日月曜日

VTuberニュースレター:2022年1月24日号(第1号)

 VTuberニュースレター:2022124日号(第1号)

 

2022124

今日のご飯はかにかまプリンの

多摩 リン

 

2016年末のキズナアイのデビューに端を発し、2018年初頭に現在のANYCOLOR株式会社からにじさんじ最初のライバーとして月ノ美兎がデビュー。そのころより急激に増加の一途を辿るVTuberは、20211019日時点で16,000人を超えている[2]

本連載では、毎回3名のVTuberに焦点をあて、様々なVTuberを知るきっかけを提供したいと考えている。

なお、しばらくの間は3名のうち1名をANYCOLOR社「にじさんじ」系列[3]1名をCOVER社「ホロライブ」系列[4]、そしてもう1名はそれ以外のグループから取り上げることとする。これは、人数の多さ、そして需要の高さからやはりこの2社のVTuberは優先して紹介すべきであろうと考えたことによる。

 

1. 今日のにじさんじライバー

「起立!気をつけ!こんにちは、月ノ美兎です」

どんなVTuber

記念すべき第1回はやはり委員長だろう。黎明期の業界を大いに盛り上げた、いわゆるVTuber四天王と呼ばれる中には入らないが、まだVTuberという存在が一部のオタクたちに知られていた程度の20182月にデビューした美兎委員長は、見た目こそ割とオーソドックスな女子高生であり、根は真面目、そして旧1期生[5]の樋口楓、静凛と3人で「JK組」というユニットを持つ。しかし、彼女の言動や趣味はかなり尖っており、初配信で映画「ムカデ人間」の話[6]をし、月ノ美兎のファンを公言する後輩リゼ・ヘルエスタを騙し、度々ホラーゲームに誘っては悲鳴を楽しむなど、同様に清楚に見えてぶっ飛んでいる電脳少女シロ等と共に、現在の業界全体の奔放さを決定づけた人物でもある。

おすすめエピソード~独断と偏見で選びます~

・かえみとが一緒に服を買いに行く話(月ノ美兎/樋口楓)

https://youtu.be/F1vNXCK45_8 (樋口楓・本編)

https://youtu.be/HCePEzlOYco (うちさ・切り抜き)

・ジェラピケを買った話(月ノ美兎/レヴィ・エリファ)

https://youtu.be/w27KPTKG034 (月ノ美兎・本編)

https://youtu.be/1a2WPNF2y24 (にじさんじ公式・切り抜き)

・謎ノ美兎(月ノ美兎/謎ノ美兎?)

https://youtu.be/gB2E54dzk30 (月ノ美兎・本編)

https://youtu.be/o6-na8AVSqI  (月ノ美兎・本編)

https://youtu.be/XRK9xxfkhk4 (月ノ美兎・本編)

・罪(月ノ美兎)

https://youtu.be/aAgpofIZ8_g (月ノ美兎・本編)

GO HOME完全版(ホラーゲーム)(月ノ美兎/リゼ・ヘルエスタ)

https://youtu.be/sgQDOU8kmvI (月ノ美兎・本編)

・ヨーロッパ企画(月ノ美兎)

https://youtu.be/6QkJQJS21BY (月ノ美兎・本編)

 

おすすめ歌ってみた~カバー曲~

https://youtu.be/DUWbqT2CEYg (輪!Moon!dass!cry!/JK組(月ノ美兎/樋口楓/静凛)

https://youtu.be/TBYbrbImDIw (ニホンノミカタ/月ノ美兎)(本編: https://youtu.be/LS2EnUYl7XQ )

https://youtu.be/PAJJT_L55ws (ネコミミモード/月ノ美兎)

 

オリジナル曲ピックアップ

https://youtu.be/kIDbhlDCLs4 (YouTube Music Weekendスペシャルライブ)

https://youtu.be/L0X1fDI5PJA (アンチグラビティ・ガール)

https://youtu.be/mkGN7jTRwfI (それゆけ!学級委員長)

 

2. 今日のホロメン

()こんそめ~」

どんなVTuber

にじさんじの大将が月ノ美兎ならば、ホロライブの大将はときのそらだろう。デビューは月ノ美兎より早く20179月。ホロライブ唯一のアイドルである

アイドルグループ「ホロライブ」最初のメンバーというよりは、ときのそら(と、マネージャーである友人A)がCOVERの社長谷郷元昭氏にバーチャルアイドル活動のサポートを依頼し、かつて存在したライブ配信アプリhololiveを作り上げたという形である。そのような経緯からか、初期のそらとも呼ばれる、現在とはデザインが大きくことなるモデルが存在する(経緯はそれぞれだが、AZKi、星街すいせい等も同様に見た目が大きく異なる旧モデルが存在する)。配信プラットフォームも最初期はニコニコ動画であり、17MirrativREALITY等を転々とした後、YouTubeに落ち着いた。

ビクターエンタテインメントから3枚のアルバムをリリースし、2019年には単独ライブ「Dream!」を開催、将来は横アリで単独ライブをすることが夢と語るなど、ホロライブの中でも特にアイドルらしい活動が多い。デビュー後しばらくは他のホロメンのようなゲーム配信、雑談配信等はあまり行っていなかったが、現在は頻度こそ低いものの、それなりにマイクラ等ゲーム配信を行っており、「大空建設サークル」に所属するなどしている。

 

おすすめエピソード

・じゃあ敵だね(ときのそら/湊あくあ/夏色まつり/大神ミオ/紫咲シオン)

https://youtu.be/cpDbKdsxQYQ (ときのそら・本編)

https://youtu.be/1kzEOXmyzjc (膳所ハルヒ・切り抜き)

・そら先輩(ときのそら/星街すいせい/不知火フレア/宝鐘マリン/天音かなた)

https://youtu.be/yOU1U9Y7XrM (宝鐘マリン・本編)

https://youtu.be/SteSI8fwJMs holoclip・切り抜き)

 

おすすめ歌ってみた

https://youtu.be/NT6Pf28eCgQ (エイリアンエイリアン/ときのそら)

https://youtu.be/TgRLreIZiaE HOT LIMIT/ときのそら)[7]

https://youtu.be/35fKzdDH654 (檄!帝国華撃団/燦鳥ノム×富士葵×ときのそら)

https://youtu.be/kTV6uSmiXEw (夢色アスタリスク[8]/ときのそら)

 

オリジナル曲ピックアップ

https://youtu.be/yVxmv4oqPzs (未練レコード/ときのそら×40mP

https://youtu.be/tiTnyZ5QLao (刹那ティックコード/SorAZ[9]

https://youtu.be/APQZKmC11mc (青空のシンフォニー[10]/ときのそら)

https://youtu.be/A4rwGGrBVrg (ぐるぐる・ラブストーリー/ときのそら)

 

3. 今日のVTuber

「こんばんわんわん!」

パトラちゃん様。今回紹介のメンバー2人が強すぎるので、パトラちゃん様くらいでないと印象に残らないと考えたため、準大手[11]774.incの代表格の一人、周防パトラを紹介したい。

 

どんな事務所?

774.incVTuber事務所の規模を考える指標はいくつか考えられるが、のべ登録者数(所属VTuber各チャンネルの登録者数の合計)が最も良く規模を示すと考える[12]と、世界第4[13]の集団である。774.incが運営するグループは複数あり、有閑喫茶あにまーれ、ハニーストラップ、ブイアパ、シュガーリリック、緋翼のクロスピースの5つである。このグループは他社でいえば期に相当する印象で、それぞれが5ないし12人、一定のコンセプトをもってデザインされ、活動している。

同社は社名以外あまり情報がない会社であり、公式ページ[14]にも会社の沿革等はない。また、他の事務所やグループでは一般的に公開されることの多い、いわゆるママ(イラスト担当者)を明らかにしていないことも特徴である。それどころか、公式ページで案内されている情報は名前とグループ名、ツイッターアカウントとYouTubeチャンネルのみという簡潔さである。

 

どんなVTuber

実質的にハニストのリーダーである。ASMR配信[15]をイチオシコンテンツとしており、DLsiteでの販売[16]も行っている。髪型も声も特徴的で、ひと目見て、一声聞いてすぐパトラちゃん様だとわかるのは素晴らしい。また、社外含めコラボも多く行っているため、色々な配信で彼女の姿を見ることができる。

音楽活動も盛んで、初配信から「あいあむなんばーわん!パトラちゃん様!」を公開し、アルバムも出している。全体的に電波曲が多い。なお、ほとんどの曲を自ら作詞作曲している。

雑談配信[17]も行うが、その中での言動があまりにおじさんであるため、パトおじと呼ばれることもある。ガンプラが好きで、戦車が好き。

 

おすすめのエピソード

・ガンプラを組み立てるのに忙しい (周防パトラ)

https://youtu.be/oir6vMrg76I (周防パトラ・本編)

・心音のために下着をつけない (犬山たまき/周防パトラ/竜胆尊/癒月ちょこ/白銀ノエル)

https://youtu.be/4oTOrqdSmYk (犬山たまき・本編)

https://youtu.be/m8mcUB7w9C0 (切り抜きパトラちゃんねる・切り抜き)

 

おすすめ歌ってみた

https://youtu.be/AaCFoBdpviw (うまぴょい伝説/さくらみこ×不知火フレア×周防パトラ)

https://youtu.be/6As9AIORorw (お願いマッスル/堰代ミコ×周防パトラ)

 

オリジナル曲ピックアップ

https://youtu.be/71D8RTud9XU (あいあむなんばーわん!パトラちゃん様!/周防パトラ)

https://youtu.be/GHKuqM46Z6Y (ラムネ色クレーター/周防パトラ)

https://youtu.be/T5o7-9Bc_-g (ぶいちゅっばの歌/周防パトラ)

https://youtu.be/pb0DyZwc_sE (かにプのうた/周防パトラ)

https://youtu.be/uJyr6V8W5JA (イミグレーション/周防パトラ)[18]

 

4. おわりに

毎日書けたらいいなと思っていたが、想像以上のボリュームになってしまったので週3回出せたらいいな、に早速下方修正した。

当然ながらそれぞれのVTuberの魅力のごく一部しか伝えられていない上、誤った見方を提供している場合もあるかとは思うが、イチVTuberファンの目線として暖かく見守ってほしい。これ以上の調査をして公平性を担保して書くには時間と金がないので企業さんやってください、というかPy2.jpさんとか見て自分で情報収集してください。



[1] 画像を貼付し、その引用元を記載していましたが、本記事では画像を削除致しますので、脚注は[2]より開始します(著作権法上の引用要件を充足しないため)

[2] 株式会社UserLocalの調査による。( https://www.userlocal.jp/press/20211019vs/ )

[3] 今後、特に断りのない場合、「にじさんじ」には日本勢のみならず海外勢(NIJISANJI ID/EN/KR/VirtuaReal)を含む。

[4] 今後、特に断りのない場合、「ホロライブ」は女性VTuberグループ「ホロライブ」に限らず、hololive EN/ID、ホロスターズ、及び(4月までは)イノナカミュージックを含む。

[5] 現在にじさんじでは「期」の概念を撤廃している(とはいっても、ほぼ同時期にデビューしたメンバーは同期と呼ぶこともある)が、2018年までは期の概念があったため、旧1期生等と呼ぶ。

[6] 別に好きだとは言っていない

[7] カバーアルバムRe:Play収録

[8] 初期にオリジナル曲を公募していた(soraSong)時期に採用された曲のひとつで、後にアルバムDreaming!に収録された。ときのそらのために書き下ろされた曲であるため、オリジナル曲と言ってもよいが、タイトルに【歌ってみた】とあるのでうたみた扱いとした。

[9] ときのそら×AZKi

[10] 作詞作曲もときのそら自身が行った

[11] 勝手な分類だが、大手がえにからとカバー、774.LIVE等それなりの規模がある事務所を準大手とした。異論は認める。

[12] 所属VTuberの数はいくらでも盛ろうと思えば盛れる気がするし、少数精鋭というパターンも考えられる。どれをとっても最適な指標とまではいえないが、のべ人数ならば薄く広くというパターンでも、少数精鋭でもある程度拾えるため。

[13] 第1位:ホロライブ(57499000)、第2位:にじさんじ(39212780)、第3位:VShojo(3735600)、第4位:774.inc(2547560)。なお、世界第4位とはいってもトップ10のうち実に8つが日本のグループである。

[15] 3DioKU100を複数台、果てはオーダーメイドのバイノーラルマイク、専用のスタジオを建てるなど、意味のわからないほどの投資をしている上にASMR配信では邪魔にならないよう広告を切っている。

[16] 2020年のDLsite ASMRアワードを受賞。ちなみに、私も買っているのでパトラちゃん様のわんちゃん。

[17] ゲーム配信も積極的で、特にマイクラでは他社のVTuberともコラボできるよう、専用のサーバーを立てている。

[18] 作詞作曲:Yunomi。ここで挙げた曲はこれ以外すべて作詞作曲:周防パトラである。

2022年1月18日火曜日

賃貸借契約にまつわる話(1) 賃料支払請求権+修繕が必要な場合の処理

601条(賃貸借)

賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。

賃料支払請求権>要件:

1.       賃貸借契約の締結→目的物と賃料を具体的に特定すること(目的物をいくらで使用収益させるか、という内容の契約こそが賃貸借契約の本質であるから。なお、返還時期の合意は賃料請求には必須でなく、賃貸借契約の成立要件でもない[1]。)

2.       基づく引渡し(使用収益可能な状態にすることが本来必要であるが、一般的に引き渡せば使用収益が可能であるから、これで足りる。逆に、引き渡されたが使用収益が不可能であったことは抗弁となる)

3.       一定期間の経過(賃料は目的物を使用収益可能な状態においたことに対する対価[2]であるから、対価発生に足る期間の経過が必要であるし、目的物の引渡しは先履行となる)

4.       支払時期の到来

 

賃貸借契約~修理が必要な場合

① 修繕の必要を通知(615)[3]、修理請求(606-1)→修繕義務履行請求(606-2で拒否不能)→修繕しない→債務不履行解除OR賃借人修繕権+費用償還請求[4]6072-x-1/-2608-1

←修繕不能/過大な費用負担が発生:修繕義務を負わない(②へ)

←賃借人の責めに帰すべき事由により生じた場合

←使用収益させる義務に含まれない場合(賃貸借契約中、設備と明記されてない形で置いてあったテレビなど)

 

② 使用収益不能による解除(611-2)<一部滅失、その他の事由で使用収益できなくなった場合において、残存部分では賃借人が賃借した目的を達することが出来ない場合[5]

 



[1] 賃貸借契約は貸借型(ある期間借主に目的物を利用させることに特色がある契約)契約であって、その成立要件は冒頭規定(587593601)に規定された事実に限られる。なお、目的物返還請求の場合は契約が終了したことを主張立証する必要があるため、返還時期の合意の主張立証+到来の主張(顕著な事実なので立証不要)する必要はあるが、あくまで成立要件ではない。(新問研/大島民裁実務基礎説。異説あり。)

[2] この対価性は一部減失の場合の当然減額(改正民法)の根拠にもなる

[3] 逆に、修理が必要にもかかわらず通知しなかった場合に損害が発生すると、賃借人が債務不履行となり415の損害賠償責任を負う可能性がある

[4] 修繕権を認めないと、勝手にした修繕は616594の用法遵守義務違反となり、賃借人が709債務不履行責任を負うことになる(答案上示すことはなさそう)

[5] 不動産賃貸借の場合の雨漏りなどは使用収益不能といえる。一方で、備付けのテレビが故障した場合程度では要検討(答案上は理由を明示してどちらに転んでも良い)

2022年1月9日日曜日

憲法短答用のノート:1 憲法上論~2条

 

憲法上論

(通説)8月革命説

帝国憲法73条に基づく改正手続きに則って帝国憲法を改正し、欽定憲法ではなく民定憲法である日本国憲法に変更したという建前になっているが、憲法の改正内容には限界があり、法的連続性があると考えるには無理がある。よって、8月革命という革命があったと考え、連続性を否定しつつ日本国憲法自体は有効に成立していると考える説。

→問題点:上論が無意味な内容となること、ポツダム宣言は天皇主権を終了させる効力はなく(内政干渉との兼ね合い)、国民主権に移行する債務を負ったに過ぎない(この批判は辰巳が使っているが、じゃあ改正時点で革命があったことにすればいいじゃないかと思う。根拠不明。)

 

憲法前文

法規範性はあるが、裁判規範性はない

前文は「日本国憲法」の後に記載されており、形式的に憲法典の一部であるから、憲法の一部として法規範性を肯定する。一方で、直接の裁判規範となりえず、具体性を欠くもので、解釈指針を示したに過ぎない(札高S51/Aug./05/長沼ナイキ控訴審)[1]

→憲法典の一部なので、改正する場合は憲法改正の手続きが必要

→前文で謳われる「平和的生存権」は裁判規範としては採用できない(最判S57/Sep./09/長沼ナイキ上告審)(最判平成1/Jun./20/百里基地)[2]

「主権」3種類

1.       「国家権力としての最高独立性」「対外的独立性」

前文3段落「政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信ずる」

2.       「国家の統治権」「国家権力そのもの」

ポツダム宣言第8項「日本国の主権は本州、北海道、九州及四国並びに吾等の決定する諸小島に局限せらるべし」

対連合国平和条約1(b)「連合国は、日本国及びその領水に対する日本国民の完全な主権を承認する」

91項「国権の発動たる戦争」

41条「国会は、国権の最高機関であって」

3.       「国政の最高決定権」

前文1段落「主権が国民に存する」

憲法1条「主権の存する日本国民の総意」

形式的意味の憲法/実質的意味の憲法

形式的意味の憲法→憲法という名前の成文法典(イギリス等には形式的意味の憲法(Constitutional Law)が存在しない)

↑↓

実質的意味の憲法→法形式にかかわらず、国家の組織や作用に関する基本的な規範を指す→国会法や公選法の一部も「形式的意味の憲法」と考えることは「可能」

固有の意味の憲法→国家統治の基本を定めた法としての憲法→政治権力とそれを行使する機関、権力の組織と作用及び相互の関係を規律する規範

立憲的意味の憲法→自由主義に基づいて定められた国家の基本法→国家権力を制限して国民の権利を保障するという思想に基づくもの。近代以降に出現。

硬性憲法/軟性憲法

改正手続きが通常の法律と同じものを軟性憲法といい、通常よりも厳格なものを硬性憲法という。

日本国憲法は56-2/96から改正手続きは一般の法律より厳格であるため、硬性憲法である。また、海外でも硬性憲法が多く、例えばドイツはドイツ基本法79条で改正手続きが定められているが、一般の法律より厳格な手続きが要求される硬性憲法である(硬性憲法だが改正回数は多い。アメリカとかもそう)。軟性憲法の国の例は不文憲法の国が多く、イギリス、イスラエル、NZ等少ない。

 

第一章【天皇】

天皇の裁判権

「天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であることに鑑み、天皇には民事裁判権が及ばない」(最判平成1/Nov./20/記帳所事件)

刑事訴追の可能性については判例、裁判例が存在しないが、およそ許されないと考えてよい

天皇の人権

人間であることから、基本的人権を享有する(←基本的人権の享有主体でないとする説も有力)。少なくとも、学問の自由や表現の自由は一応ある(制約を受ける)が、国籍離脱の自由などは完全にないと解されている。

辰巳の誤り、私の熱意。

天皇の崩御だけが皇位継承の原因と書いているが、そんなことはない(皇室典範4条は「天皇が崩御した際は皇嗣が皇位を継承する」ものであって、崩御以外の原因で継承できないとはどこにも書いていないし、仮にそう解釈すべきであれば上皇陛下は……)



[1] これら政治方針がわが国の政治の運営を目的的に規制するという意味では法的効力を有するといい得るにしても,国民主権代表制民主制と異なり,理念としての平和の内容については,これを具体的かつ特定的に規定しているわけではなく,前記第2,第3項を受けるとみられる第4項の規定に照しても,右平和は崇高な理念ないし目的としての概念にとどまるものであることが明らかであつて,前文中に定める『平和のうちに生存する権利』も裁判規範として,なんら現実的,個別的内容をもつものとして具体化されているものではない

[2] 「平和主義ないし平和的生存権…は,理念ないし目的としての抽象的概念であって,それ自体が独立して,具体的訴訟において私法上の行為の効力の判断基準になるものとはいえ」ない。

2022年1月2日日曜日

特許法:試験研究実施の簡単な解説

特許法トピックシリーズです。今日は試験研究実施について。論点としてジェネリック医薬品の問題、リサーチツールの問題を取り上げてみました。 

試験研究実施(69-1)

特許発明を業として無断実施しても、試験研究実施であれば特許権の効力は及ばない

特許法の目的たる発明の奨励(1)から、試験研究による発明促進という必要性と、試験研究であれば特許権者への経済的打撃は小さいという許容性から、試験研究実施(69-1)は適法となる。この趣旨から、技術開発目的である(利潤追求目的でない)ことが必要となる。

~例外(最判H11/Apr./16/民集53-4-627/膵臓疾患治療剤事件)[1]

ジェネリック医薬品の製造会社は後発医薬品とはいえ、安定性試験等の試験を発売前に実施し、薬機法[2]141項の承認を得る必要がある。メーカーとしてはこの試験は発売前、すなわち特許期間中に行ってしまいたいという需要がある一方で、「業として」「実施」するという評価は免れないため、無断で行うことは出来ない。そこで、本条の試験研究実施とした。しかし、試験研究実施は技術の進歩のために特別に許可されるものであるため、ジェネリック医薬品という特段進歩を予定しない内容かつ、最終的には利潤追求を目的とした研究開発のために用いることはできないのではないかという反論が考えられる。

この点について、最高裁は「特許権の存続期間が終了した後は、何人でも自由にその発明を利用することができ、それによって社会一般が広く益されるようにすることが、特許制度の根幹の一つである……もし(試験研究実施に当たらないとすると)特許権の存続期間が終了した後も、なお相当の期間、第三者が当該発明を自由に利用し得ない結果となる。これは前示特許制度の根幹に反するものというべきである。」として、肯定の立場を明確にしている。[3]

~リサーチツールの使用

リサーチツールとは、PCR法や実験用ラットなど、研究室で実験に用いるツールを指す。これが特許を受けている場合、このツールを産業における研究開発に用いることは試験研究実施として許容されるか。

確かに技術の進歩に資するものではあるが、もともと研究の手段として使用されることを目的として発明された技術であることから、研究開発に利用する場合に特許権が及ばないとするとおよそリサーチツールの発明は特許権の効力が実質的にないことになってしまう。また、69-1は特許発明自体の分析改良を中心とした研究開発について適用されるものであるところ、リサーチツール自体の改良を目的として試験研究実施をすること自体は許容されるが、リサーチツールを用いて別個の技術を開発する際にまで同条の趣旨が及ぶものではない。

なお、汎用性が高く、代替技術の乏しい基礎的なリサーチツールに関しては特許権の範囲を制限するべきである、という議論があるが、それは69-1の問題として捉えるべきではなく、もっぱら立法の場や、現場レベルの調整やFRAND宣言類似の考え方など対応は複数考えられるが、ともかく別途考慮すべき話であろう。



[1] 島並良・上野達弘・横山久芳「特許法入門」p300~p304

[2] 司法試験で書くことは少ないだろうが(行政法で出ないとは限らない)、薬事法は薬機法になっているのでうっかりに注意

[3] 否定説としては、技術進歩に趣旨の重点を置き、先の規範を貫徹すれば否定説になるが、明確に判例に反することになるので採用はオススメしない